或る馬

 しばらく競馬を見続けていると同じ馬を見ることが度々ある。それも重賞戦線を賑わすような馬ではなく、条件戦で地道に戦っている馬を、である。


 テレビで何の気なしに大井競馬を見ていたとき、ある馬名が目についた。

「サーストンアクセス」

妙に見覚えのあるこの名前…そうだ、初めて競馬場に行ったときの、初めて生で見たレースに出ていた馬だ。そうか、あれから2年以上経つがまだ走っていたのか。興味本位で調べてみると、中央デビューで未勝利を勝った後、条件戦を勝てないまま大井に移籍し、それからずっと頑張っていたのだと知った。そういえばあの時は確かサーストンアクセスが2番人気で、勝ったのは「ブロッコリー」という馬だったか。1番人気で勝ちっぷりが良かった気がするし、名前も特徴的だったなあ。

そんなことを思い出しつつ、サーストンアクセスに注目したが残念ながらそのレースを勝つことはできなかった。それでもまた見かけた時には応援しようと決めた。


 それからしばらくしたある週末、グリーンチャンネルで中央競馬を見ていて驚いた。例の「ブロッコリー」が出走しているではないか。慌てて調べてみると、この馬も中央デビューののち、未勝利で大井に移籍、そこで破竹の4連勝の快進撃を見せると中央に再転入して奮闘していたようだ。こちらもコンスタントに出走していたのになぜ今まで気づかなかったのか。大井でサーストンアクセスを見たことで目に留まりやすくなっていたのかもしれない。

肝心のレースはここ何戦かが奮わなかったこともあり人気は低かったが、結果は後方から追い込んでなんと2着。なぜか少し嬉しくなった。


  同じ中央から転入した2頭。かたや中央に舞い戻り、かたや地方に根を下ろし、だがどちらも今いる場所で懸命に戦っている。その馬生はほんの一瞬重なり合い、そしておそらく二度と交わることはないだろう。それでも、私という一人の人間のなかで、その2本の道は再び焦点を結ぶ。競馬を見続けること楽しみをまた一つ積み重ねた瞬間だった。

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