地方にて

湿った馬場で前残り。それはわかる。しかし、2頭で逃げるとハナを取った方は4角楽々、直後追走の方は3角で鞭が入るのが不可解だ。困ったことに実績上位の方がハナをとれる訳でもないのがとても辛い。これは買えないなという人気薄の馬がハナを奪って逃げ粘るパターンの繰り返し。


最終Rを残して2000円以上のマイナス収支、完全に馬場に翻弄されてしまっている。当たらない焦りが正常な判断を妨げるのか、買い方までどうも変だ。大体なんだ、さっきのメインは。ワイド2-7と4-7で迷った挙句に4-7を切るなんて…トリガミにはならないのだから2点買えよ!なんで急に冒険するのだ、堅実にコツコツ当てるスタイルはどうしたと自責の念に苛まれたのは7が2着、4が3着でゴール板を通過した後であった。


いや、後悔先に立たず。それよりも最終レースまであと20分もない。最終レースはえてして難解だったりするのだが、幸運なことに今回は新聞を見た段階で5頭まで絞れた。パドックの様子も悪くない。簡単な算数で5頭中3頭を複勝で買えば必ず当たるのだ。しかし5頭のうち3頭は上位人気3頭なので、この3頭は3連複にしよう。一番人気の組み合わせなので6倍ほどしかつかないがしかたない。そして残りの2頭は複勝で5倍つくので複勝で狙おう。利益は薄いが最後ぐらいは当てて帰りたい。


さて、当たることは決まったようなものなので無料の熱いお茶をすすりながら悠然と発走を待つ。この時期の夕方ともなれば上着なしではかなり寒いものだ、などと考えているとゲート入りが始まる。一般戦のファンファーレが鳴り響き、ゲートが開く。そして、


 美しい夕焼けの中、人気薄の馬がハナを奪って先頭でゴール板を駆け抜けたのであった。

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