第1章 2.電波時計

会社には壁掛け時計が設置されている。

この時計は電波時計で、電波を受信して作動するようになっている。

「日本標準時」という正確な時間を電波にのせているので、いつでも時計の時刻は安心出来るものだ。

会社では腕時計をしていることもあるが、はずしている時にはこの壁掛け時計を見て時間を確認出来る。


あると心強い電波時計だが、最近受信できない時間帯があることに気がついた。

最初は保守作業かな、と思っていたのだが毎日同じ時間帯に電波を受信せずに時計がとまってしまうようになった。


そこで考えたのが、電波障害ではないかということだった。

近くで工事を行っているのかなと思ったが、そういう気配は無い。

もしかしたら、ライバル社から妨害電波が送られてきているのかもしれない、なんて考えてしまった。


会社では窓際に電波時計を掛けているわけではないため、比較的電波を受信しにくいのかもしれない。

けれども、今まで作動していたものが急に動かなくなるなんて気になってしまうものなのだ。

壁に掛かっている時計は、案外と皆が見ているものだ。

時計がピタッと止まってしまうと仕事の効率が落ちてしまうこともある。

同僚の手もなぜか休んでいるのを発見してしまった。


電波を遮るものが近くにあるのかと再び外に目をやってみるが、大きな鉄塔やらビルなどは存在しない。

都内の会社と言うと、巨大なビルを想像するのかもしれないが、うちの会社は違う。

都内でも結構ゆったりとした作りの会社なのだ。


あとは磁器関係が怪しい。

電化製品等の強い磁気が発生する場所の近くに、電波時計が掛かっているので、そのせいかもしれない。

そういうことを言い出すと、天井の蛍光灯も怪しいし、大型パソコンも怪しいかもしれない。


結局は、何が原因かはわからない。

不便なので、都度強制受信ボタンを押すようにしている。

折角の電波時計なのに、何だか不便だなあと感じている。

便利さを追求すると、最終的には人間が使われてしまうことがよくあるように思う。

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