第1話 バイト先にて

 いつものように、学校が終わってすぐ、叔母さんのやってる喫茶店で、バイトをしていた。ホールだ。キッチンのときもあるけど、今日はホールをやる日だった。ホールは、ウェイター。キッチンは料理を作る。専門用語みたい。言わなくても、わかるよね。


 ここは、学校からけっこう離れてる。なので、学校の関係者は、来ないはずなのに。


 よりによって、あの美少女、佐藤さんがきた。できれば、遭遇は、避けたいが、今日はホールなので、ぼくが接客するしかなかった。


「いらっしゃいませ。ご注文がお決まりでしたら、お呼びください。」



「あれっ、同じクラスのあの秀才、成瀬君だよね??どうして、ここに?うちの学校って、バイトできたっけ??これって、いいの?」


「いや、校則では、バイトは、ダメです。お願いします。ぜったいに、言わないでください。

ほんと、なんでもします。口止め料はいくら必要ですか?」


「別にお金なんていらないよ。そういえば、成瀬くんって、めっちゃ頭いいんだよね?じゃあ、ノート貸してくれないかな?わたし、勉強できないから、すこし助けてほしいかな。だめかな?」


「はぁ、そんなことで、良ければいくらでも、大丈夫です。ありがとうございます。ほんとに秘密にしてください。バレて、退学とかなると、まずいんで。」


「なんで、同級生なのに、敬語なの?タメ口でいいじゃん。私のこと嫌いなの?」


「いや、嫌いじゃないです。むしろ、、いや、なんでもないです。ぼく、いま仕事中なので。」


「まぁ、いいわ。あとで、スマホ貸して。連絡先の交換しよっ。ノートを貸してもらったり、返すときに、連絡先ないと不便だし。あ、飲み物は、紅茶で。」


「ミルクかレモン、どちらにしましょうか?」


「ミルクで。」


「かしこまりました。」



 とりあえず、退学、停学、謹慎、そういう危機は、回避できたのかな。さすがに、佐藤さんが、告げ口するとは、思えないし。


 レジで会計のときお金を受け取った。そのときにメモ紙も、もらった。

 たぶん佐藤さんのトークアプリのIDなんだろうな。電話番号でも、メールアドレスでもないし。


 そういえば、スマホないけど、どうしよう。

勉強の邪魔だということで、持たせてもらってない。



 しかし、佐藤さん、やっぱりめっちゃ可愛いな。今日は、たくさんお話しできた。弱みを握られてしまったけど。


 連絡先も、ノートの為だと思うけど、教えてくれたし。自分から、スマホあっても、なくても、連絡なんて、とてもできないけど。

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