第9話  六年生は無力ですか?

 家に帰り着いたが未だ寝てる、何時も通り服を握り締めて居て降ろす事も出来ない、未だ軽いから出来る事、二歳児ほどの重さしか無い出来るなら早く重くて勘弁してと言える様に成って欲しいのだが、唯少しアンバランス、頭の大きさだけは三歳児近く有るだからかも賢いのは…。


 幸いにして未だグッスリお休み中、其れでリビングから聴こえて来る話が此の子の耳に届かずに済んだ、例の深刻な話が続いて居る何時かは話さないといけない日が来るだろうが、其れは少なくとも今じゃない。


 自分の部屋に連れて行き、ベッドの上に置いて見た服から手を離して上げる悲しそうな顔をして手をいっぱいに伸ばし何かを探してる薄手の毛布を掛けると其れを掴み、顔を埋めて安心したような顔に戻っていた、何で此の子の下に不幸が集まるのか考えて居た。


 起きそうに無いので階下に降りる、零れて来る話は在る程度の決着が付いた様だ、もう一か所別の病院に行って、其の結果で考えようと‥‥。


 玄関で音がする、此れはカギを回す音。

「ただいま!」

 帰宅を告げる元気な声、其の主は中三に為ったお姉ちゃん、時間は18時を過ぎている生徒会の仕事は大変と言ってる、直ぐに僕に気が付き其の顔色で良くない事が起きている事に気付いた。


 お母さんたちの話も其の声で終わった様だ。

「先ずは病院に行ってからまた相談ましょ。」

「ハイ、そうですね。」


 其れで今日の事は決着した、叔母さんは一人っ子らしく其の親も既に他界して居る事も今日言っていた、相談したくても其の相手が居ないと、疎遠な親戚が居るらしいが交流も無い様で、唯一相談できたのが家の母さん位だとも‥‥。


「ネェ?、何か在ったの?」

 そう小声で耳打ちされた、でも僕が話しても良いものだろうか?、如何しようか迷っていた。


「あんたが一人で考えてもしょうが無いでしょ?、三人寄れば文殊の知恵って言うじゃない、あたしも一緒に考えて上げるから、何が有ったか教えて呉れる?」

「実は…、」

 そうして今日あった事の顛末を教えて上げた。


「それって行き成り過ぎない?、何か別の方法無いのかしら?」

「でも病院の先生が言ってたんだし、良い方法何て見つかるかな?」

「学校で調べて見るね、確か障害の在る子供の受け入れ方法の資料が在ったと思うよ。」

「勉強大変なんじゃない?、後生徒会も忙しいって言って無かった?」

「其れ位何とでもして見せるよ、あんたはちゃんと見て上げててね。」

「分かった。」

 でも成果は何も無いまま過ぎて行く、そして其の日はやって来た。


 学校から帰る途中気が重い、今日は葵ちゃんが病院に診察行く日、そう結果が出る日、まだ希望は捨てないで置こう結果を聴くまでは…。


「ただいま!」

 大きな声を出して玄関を開ける、略同じタイミングで帰って来たようだ。


「お兄ちゃんお帰り!、あたしもただいま!」

「お帰り、良い処に帰って来たね。」

「お帰りなさい、お邪魔してます。」

「丁度良かった、葵ちゃん見てて呉れない?」

「分かったよ、葵ちゃん上に行こう。」

「お兄ちゃんのお部屋?」

「そうだよ、行こうか?」

「ハイッ!」

 元気な返事とは対照的な二人の顔、眼は真っ赤に為って居た。


 一旦部屋に入りおやつを持って来ると言って降りて来た、悪い事は解って居ても聞き耳を立てていた、行く末が決まって仕舞うから…。


 恐れていた通りの会話が聞こえて来る、聴きたくない会話の内容が聞こえて来る。

「先生が言ってるから、指示に従うしか無いんですか?、私絶対に嫌です。」

「他の方法が無いのかしら、もう一か所に行って見ない?」

「其処でも同じ事言われたら、私耐えられません!」

「三度目の正直と言うじゃない?、もう一か所だけでも行って見ましょう?」

「何処に行くというんですか!、有名な所に其の権威と言う箇所に行ったんですよ!」

「一寸遠いけど、都心まで行って見ない?」

「其処でも同じ事言われたら、あんなに元気にしてるあの子の、あの子手術をするんですか!」

「納得出来ないんでしょう?、納得が行く迄聞いて見ましょうよ?」

「同じ事言われたら如何するんです!、一生懸命歩いてるあの子の足を奪われるんでしょう!」

「まだ決まってる訳じゃ無いでしょう?、だからもう一か所に・・・・。」



 そうあんなに元気に歩いてる、あの子の左脚を切断して仕舞う、今後の成長の妨げや他の部署への影響を避ける為、早い内の方が良いと、早い程その後の生活に馴染むからと。


 成長が遅れてる左脚、歩く度に関節と骨盤、そして其れをかばう様にして居る為背骨に負担が掛かり湾曲して、内臓に負担とダメージか起きるからと言われていた、其れを三歳児検診の時に言われてた、其れを僕は聞いて居た、子供だから割って入れない、何も口を出せない、だから早く大人に成りたかった、でも今僕はまだ子供…。


 頭の中を悲しい記憶が蘇る、左脚が無く為り内臓に迄ダメージを抱え旅立った小さな命の事、全て僕が悪かった、気を付けてさえいれば避けられた筈、すばしっこく僕が追いつけなかったあの小さな仔猫、意地を張らなければ其の場面に会わずに抱いて帰れたかもしれないと、何度も悔やんだもんだ、あんなに最後迄しがみ付いて居たのに守れなかった…。


 確かに此の子は僕の不注意なんかで為って仕舞ってはいない、どうしようもない生まれつきだから、でも其れを受け入れられるのか、だってちゃんと歩いてる、速くこそ無いがあの子は颯爽と走って居る、少なくともあの子はそう思ってる、本人が其れを望むのか?、自分で判断して決めるのか、違う筈回りがそう言って居るだけだ…。


 でも今の侭では将来的に更なるハンデを背負って仕舞うから、先生はそう言って居る筈、子供じゃ無けりゃ何でも言える、何かをして上げられる筈、子供なのが悔しかった…。


 せめて何かして上げられる事が無いのだろうか、僕が子供でも…。





 楽しく、明るい物を書くと宣言して置きながら、暗く悲しい物を書いてます、実際の時期と、作品内で、時代に多少のズレが出ている事を承知で書いて居ります。

 其処は飽く迄小説なのでご勘弁ください、残念ですが此れを書く元に為った実話が存在します、医師に言われた事も含めて…。 

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