第10話  六年生の知恵?

「ネエ?、可愛い靴履かせて上げない?」

 学校から帰って来たお姉ちゃんにそう持ち掛けられた。

 今日の結果を聞かれてた、一緒に何とか出来ないか考えようと言って呉れていたが、色々な事を調べて呉れたのだけど、解決策に繋がりそうな物が無かったと僕に謝って呉れた。


「ごめんなさい、何も見付けられなかった、ゴメンナサイ!」

「其れ、お姉ちゃんの所為じゃ無いよね?」

 其れを言ったら僕何てもっと役に立って無い、子供に出来る事なんて見つからなかった。

 だからせめて、自分の足で立てる間に可愛い格好させて上げようと為って居た。


「葵ちゃん女の子だよ?、きっと可愛いお洋服を着て、可愛い靴を履いて見たいよね?」

「そう言えば、可愛い格好はしてるけど、靴だけはそう言うの履いた処見た事無いね!」

「そうでしょ?、何時も履きやすくて、動き易いのばっかりだもんね。」

「そうだよね、脚が悪いからって、ベビー用の運動靴見たいのしか見た事無い!」

「じゃあ今度の日曜日に見に行こうか?」

「近くにそんなお店有ったっけ?」

「此の間、高校の見学に行った時に途中に有ったの、ベビー服売ってるお店見つけたの。」

「靴も売ってるの?」

「看板に、ベビー用品と、子供服、靴って書いて在ったよ。」

「遠いの?、自転車で行ける?」

「自転車で10分位だよ!」

「じゃあ僕でも行けるね?」

「一緒に行こう!、そしてお母さんたちには内緒だよ?」

「何で?、悪い事じゃ無いんだから隠さなくても?」

「びっくりさせないと詰らないでしょ!」

「そう言う事か?、其れは内緒にしないとね!」

「じゃあ決まりだね、今度の日曜日、10時に出発しよう、二足買わないといけないから靴のサイズチャンと見といてね?、お願いだよ!」

「13センチだよ?」

「駄目でしょそれじゃ、右と左で違うでしょ?」

「そうか、右と左大きさ違うもんね、ちゃんと見て置くから!」

「任せたよ、お金はお姉ちゃんが出すから、安心して!」

「僕も出すよ、お年玉残して在るから!」

 そうして、次の日曜を楽しみにしてた‥‥。


 次の日、母さんが保育園に迎えに行って家で叔母さんの帰りを待って居た、見つからない様にこっそり履いてる靴を見る、右13.5、左12.5、丁度一センチ違いを履いて居る、忘れない様にメモして置いた、よく見るとやっぱり運動しやすい靴だった…。


 何時もの様に其の後に大きな声で声を掛ける、今帰ったかのように。

「ただいま!」


「おかえり、お兄ちゃん!」

 他人が見ると微笑ましい光景、知って居る者が見ると悲しい光景、体を揺らし迎えに出て来る、此の子は一所懸命駆けていると思って近付いて来る。


「お帰り、夕食の準備在るから見て居て呉れる?」

 此れも当たり前の光景に為って居た、まるで家族の様に…。


「お兄ちゃん、見て呉れる?」

「如何したの?」

「かいだん上れるの!」

 階段に向かって登り始める、落ちたら困るので後ろから付いて行く。


「すごいでしょ?、上まで上がれるよ。」

「そうなんだ、凄いね。」

 違和感を感じた、何だろう此の違和感?。

 後から見ていて気付く、頭も体も揺れて無い何でなんだ?。


「葵ちゃん、お休みしながら登るんだよ!」

 母さんが声を掛けて、途中で止まり振りむく。


 そう言う事か!、違和感の正体に気付く、手すりに摑まり立ち止まる。

 一瞬では在るが、左脚が浮いて右足だけで立ち止まる、左脚が浮いて居る3㎝弱位か?、其れ位左右の足で成長速度が違うんだ、元々階段だから段差が在るから躰が揺れないんだ…。


 最上段まで登り切り、廊下を移動始めたら何時もの光景に戻っていた、何かが頭に引っ掛かるが、其の時其れに気付く事は出来なかった。


「ただいま!」

 元気な声で帰宅した、声の主はお姉ちゃん、時間は19時前生徒会が忙しい様で此の処此の時間で帰って来る、葵ちゃんは叔母さんと既に帰って居る。


「愈々明後日だね、可愛いの選んで上げようね!」

 元気な声と相反する泣きそうな顔、何の為に其の靴を買いに行くのか?、其れを考えれば仕方のない事、僕だって同じ事生れた時から知って居る其の子の事を思えば…。


 愈々其の当日自転車二台で走り出す。

 叔母さんは仕事、保育所は休み勿論泣かれる付いて行くと聞かない、此処の所は休みの日は家で預かるのが当たり前に為って居た、リビングのテーブル<とは言っても布団を外しただけの炬燵、宿題する僕の脇で平仮名書いたり、絵を描いたりするのが当たり前に成っていた。


 もう完全に妹の座を得ている様で、休みで時間が在るとお姉ちゃんが離さない、羽交い絞めに逢って居る、其れが当たり前の風景に為って居た、だから置いて行かれるのを嫌がった。


「あそこだよ!、あのお店!」

「此処なんだ、良いのが在ると良いけれど?」

「在るに決まってるでしょ、何の為に此処迄来たの!」

「そうだね、絶対見つけて帰ろう!」


 可愛い服、七五三や記念日にと着る服など店の中に溢れてた、靴売り場はその奥に在った、運動靴、普段履く靴の奥に並んで目的の靴が何種類も。


 お姉ちゃんが他の学校などに出かけて行く時、学校の代表で行く時に履いて居る様な靴、黒い光る靴みたいなのが並んでる、可愛いリボンなんかが付いて居る。


 お姉ちゃんが必死に選んでる、僕も見て回る一つの靴に目が留まる、似合うとかオシャレとか違ってるんだけど、眼が離せなく為って居た頭の中はフル回転していた、一昨日見た光景が頭の中をグルグル回っている、若しかしたら全部無かった事に為るんじゃ無いか、そんな事を幼い頭の中で考えて居た、僕が動けなくなっている事、其れに気付いたお姉ちゃんが寄って来た。


「確かに可愛いんだけど、合わせる洋服選ぶわよ?」

「ゴメン、僕は是が良い、もう一足はお金は出すからお姉ちゃんの見立てで選んで上げて。」

 僕の顔見て、何か気付いた様だ。


「ハハ~ン?、何か面白い事考えてるんだね其の顔は!」

「別に面白い事何か考えて無いよ、此の靴は僕が買うから!」

 お姉ちゃんが其の靴を手に散り観察してた、他の靴見て違いに気付いた様だった。


「此れに何か秘密が有るんだね?、何企んでるの白状しなさい!」

 羽交い絞めに逢って居た、然もお店の中で恥ずかしいたらありゃしない。


 言っても良いのか考えて居た、こんな幼稚な考えを‥‥。

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