第7話 三年生から五年生の頃
すやすやと寝息を立てている、小さな手から力が抜けた、小さな目も閉じていた。
でも怖くなかった、小さなお腹は規則正しく膨らんでる、もう怖くなかった幸せそうな顔をしているから、そっと本当のお母さんに手渡していた。
受け取っていたが、その叔母さんの顔は幸せそうな顔をして居なかった。
すかさずお母さんが叔母さんに声を掛けていた。
「初めての子育てだから、不安一杯有るでしょうし、一人で育てて行くのも不安に成ると思うけど、此れも何かの縁、子育ての困り事は何でも聞いて?、こんなの二匹も育てたからネ。」
「有難う御座います。」と何度も頭を下げていた。
叔母さんと赤ちゃんの二人で大変だったと思う…。
小さな町の中で叔母さんは仕事して赤ちゃんの面倒を見て、時々家で預かる事も有った。
でも少しずつ確かに、おかしくなって行った、僕は四年生になってお姉ちゃんは中学生になり、又梅雨の便りが聞こえて来る頃、叔母さんが泣きながら、お母さんと話して居る。
超未熟児で産まれた事が原因だと聞こえて来た、あんなに綺麗な目は斜視と言う物になっている、それ以外にも出てくるかもと…。
でもそれ以上に同じ月齢の子供に比べ二廻り小さい体、発育も遅れて居ると泣いていた。
他の子が上手にハイハイしたり、伝い歩きしてる頃に、漸くハイハイする事が出来る様に成ったばかり、歩ける様に成れるのかとも…。
でも抱いて上げたとき、必ず僕の服を引っ張る力からきっと大丈夫、必ず大きくなってくれると、僕は信じていた。
半年程して、伝い歩きから一人で立って歩ける様に成る、頭と体を揺らしながら歩き出す、僕を見つけて向かって来るその歩き方が可愛かった…。
でも其れは、嬉しい事では無かった様だ、お母さんと話して居るのが聞こえて来た、脚に障害が在るかも知れないと、此の子には産まれ付き足に障害が在る可能性か高いと…。
聞いて居て悲しかった、こんなに元気なのに?、こんなに可愛く笑って居る子なのにと…。
益々あのチビに重なってみえて来る、生きて居れば後ろ足を失っても、元気に遊べたのか?、大きく為れたのだろうか?、目の前で笑ってる此の子の様に笑って呉れたのだろうかと…。
更に半年が過ぎて五年生になり、又雨の季節に成ろうとしていたころお姉ちゃんも無事進級しとは言っても、更に頭も良く為って、益々頭が上らなく為って居た。
「悔しいか?、ホレ!」
学年の順位表片手の中の真ん中だった、でもガリ勉って訳じゃ無く叔母さんが仕事で帰るのが遅く為る時には、母さんが保育園に迎えに行って預かる事が偶に在るのだが、其の時は付きっ切りで遊んでたし、お絵かきや、お勉強を教えてた。
体にハンデは背負って居るんだけど頭は良かった…。
未だ書けはし無いが、数字と平仮名を理解して居る様で、良く誉めていた。
僕は少しだけ上を見て感謝していた、最初は恨んだ、体の自由を奪って置きながらと、でも此の子に知恵を与えて呉れた事に感謝せずに居られなかった、僕は相変わらず賢く無いけれど…。
「先天性尖脚関節機能障害」其れが此の子に付けられた障害名。
五年生の中頃、夏の終わりにお母さんと話す叔母さん、凄く悲しそうに話して居たが…。
「あんなに元気に育ってるのに、何心配してるの!、元気出しなさい!」
「そうですね、あたしがシッカリしないと。」
もう直ぐ五年生も終わりに近い頃、割処はハッキリして来て居た、体と頭を揺らしながら歩いて居た、関節の具合も悪いのだが、ただでさえ小さい体なのに左脚の成長が遅れていて、其の為足を着く時に其れに合わせて体が揺れる、見ている分には微笑ましく可愛い仕草なんだが…。
唯、此の子ちょっと変?、確かに頭も良くて普通に喋るのだが‥‥。
「ウニゃ!、ニャ、ニャ!」
休みの日に、仕事で居ない叔母さんに変わり、預かるのだけど相変わらず懐いて来る、体を揺らして僕に駆け寄って来る、そして服を掴んで離さない。
「お兄ちゃんあそぼ!、お散歩行こ?」
其れで手を引き、散歩に行くのだが、近所の野良猫見つけると…。
「ウニゃ!、ニャ、ニャ!」
と言う事に為る、暫くお話が終わらない、長いと五分程、相手の猫が呆れて離れて行く迄。
猫の呆れ顔と言うのを始めて見た、あの顔は間違い無く呆れてる。
其の性だろうか、猫も寄って来る飼い猫、野良猫構わずに、まるで此の子の行く末を案じて居るかのように、最近では猫の方から…。
「ニャー、ニャニャニャ!」
ホラ、また別のお友達が寄って来た、この辺の猫の保護下に置かれて居る様に。
「ヴーヴー、ヴーヴー、ミャ」
そう返してる、お蔭で往復300mのお散歩コースなのだが、何時もシッカリ一時間掛かってる、今日は何時に帰れるのか‥‥。
折り返し地点まで来たが、何時もの様に駄々捏ねる。
「お兄ちゃん、抱っこして!」
残念ながら帰りは何時も此のパターンに為って居る、此処に来る迄約50分ほど使ってる、帰りは5分掛からない、締めて計一時間の散歩コースでした。
勘弁して欲しい、良いよ此の涼しい時期ならば、一寸前の夏の時期と残暑の厳しい時期、暑い最中に湯たんぽ抱いている様で、我慢大会かって!。
僕の服をシッカリ掴み、安心したような寝顔してられたんじゃ諦めるしか無かった、どんなに熱くて堪らなくても…。
小さな小さな体で一生懸命に生きてる此の子は如何為って行くのか、此れだけ元気にしてるんだ多少のハンデには負けないで欲しい、そう思いながら歩いて居た。
何故か後ろを猫が付いて来る、此れも何時もの事なんだ、何故かは判らなかったが‥‥。
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