第15話 電車が目的地に到着した
電車が目的地に到着した。遊園地のエントランスに直結している駅で、連休中ということもあり、かなりの親子づれやカップルが流れに乗って遊園地の入口を目指している。
僕たちも遊園地の入口で入場券を購入する。もちろん、入場券はフリーパスポートを購入する。
そして、入口付近の土産物屋やレストランが並ぶエントランスを通り過ぎると、この遊園地の最大の売り物である日本一大きな観覧車の列に並ぶ。この観覧車は一周するのに一五分かかり、乗っている時間も一番長い観覧車なのだ。しかもできたころは人気があったらしいが、いまはハイテクのアトラクションに人気を取られていて、あまり並ばなくても済むらしい。
「鬼無、そういうことか! 」
すでに、人ごみの中、雄奈さんに人格が変わっている。
「わかりましたか? 今日は一日中、これに乗る予定なんです」
「そういうことなら、私たちも順番を決めよう」
雄奈さんがそう言うと、僕の隣で黙り込んでしまう。脳内会議が始まったんだ。
二〇分ほどならんで、僕たちの番になった。ゴンドラに乗り込むと、すぐに雄奈さんの雰囲気が変わる。
「一番は私ね。鬼無くんって知能犯ね。こんなこと考えるなんて」
この癒しの雰囲気は優奈さんだ。
「いや、カラオケでもいいかなと思ったんだけど、薄暗い密室より、明るく開けた密室の方がいいかなと思って。それに話すことがメインだから。個室で静かだと、従業員がしょっちゅう覗きに来るからね」
「鬼無くんの歌も聞きたかったな」
「僕、歌へただから」
「ラブソングだと気持ちがこもっていれば大丈夫だよ」
「そこのところは自信がある。優奈さんたち限定だけど」
「鬼無くんって、口が上手いのね」
「そんなことないよ。本心だもん」
そうやって優しい時間が過ぎていく。いつものように、海里さんの人格がころころ変わることがない。僕も今相手が誰か気を使うことがないので、落ち着いて話ができる。
そうやって過ごしていると、十五分はあっという間だ。
やがて、ゴンドラは昇降口に近づいていく。
「残念。もう終わりか。時間的にあと一回で終わりかな」
「そうだね。待ち時間があるから仕方ないね」
「次を楽しみにしているね」
優奈さんが僕の手を握り、そういうと雄奈さんが戻ってきた。
「鬼無、さっさと並ぶよ」
「はい」
雄奈さんは、ゴンドラから降りると、すぐに、また観覧車の列の最後尾に並ぶ。
僕も雄奈さんについて列に並ぶ。
再び、十五分ほど並ぶと僕たちの番だ。
「今度は俺だな。真治、よろしくな」
勇ましい声が僕に掛けられた。。そしてゴンドラに乗り込むと、目の前には金髪にポニーテール、そして物とがきつめの海里さんが座っていた。、これは勇奈さんだ。二人っきりの時はそれそれ一番僕に見てもらいたい外観で現れるみたいだ。
勇奈さんと話すのならまずはこの話題からだ。
「勇奈さんと初めて会った時まさか同じ学校の海里さんだとは思いもしませんでした。それに初めて話した時も、僕、驚きました。いきなり俺っていわれたから。」
「そうか、そういえば、「地ですか?」なんて聞いていたな。まあ、地といえば地だけどな!」
「そうです。かなり混乱しました。それに喧嘩も強いし」
「腕には自信がある。五人までは大丈夫だな。それ以上になるとさすがに逃げるけど」
「五人も相手ができるんだ」
「実際に五人をのしたこともある。俺たちは肉体のリミットを解除できるからな。その辺の人の限界を基準にしない方がいい」
「なんで、肉体のリミットが外せるんですか」
「よくわからないな。結奈が言うには、私たちの人格ができた時って、かなり、優奈が危険な状態だったから、火事場のクソ力が出て、それが日常的になったんじゃないかって。そんなことより、もっとお前のことが知りたいな」
「僕の事ですか。僕平凡だからな」
「そんなことは良くわかっている」
「趣味とか、好きなものとかだな」
「趣味って読書かな。携帯小説みたいな軽いものばっかですけど。あとゲームとか」
「やっぱりそうか。真治、体を鍛えないといざという時、優奈を守れないぞ。二人で、十人まではいけるようにしないと」
「僕一人で、五人なんて無理ですよ」
「俺が付き合ってやるよ。今でも、バストアップ体操とかヒップアップ体操をしているから、まったく遊奈ってエッチなくせに、体形を維持させられるのは俺なんだから」
「そうだったんだ」
でも、男の僕にはバストアップ体操とかヒップアップ体操とか必要ないんじゃないか。
「そうそう、体力担当は俺だってさ。でも、スタイルを維持する努力を惜しむ気はないんだけどな」
そう言ってニヤっと払う勇奈さん。
そうか海里さんでさえ、スタイルを維持するために努力をしているんだ。僕も少しは体を鍛えないとな。そんなわけで、二人で筋トレ話に花が咲いたところで、ゴンドラが一周する。
再び、ゴンドラを降りるとすぐに、観覧車の行列の末尾に並ぶ。
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