第4話 何が起こっているんだ
何が起こっているんだ。全くこの変化に理解できない僕に向かって、祈るように声を掛けてくる女の子。
「あのね。あのね…… 」
か細い声で、涙をためたような色の瞳はさらに潤んで今にも泣きそうになりながら、何かを必死に訴えようとしている。
「はーっ。あの……、海里さん、なんといっていいのか? どうしてそんなことが出来るんですか? いやどういう仕組み何ですか?」
「ちなみに今のは恥ずかしがりやは夕奈です。ちなみにこの夕奈は夕日の夕に奈良の 奈です。
今、話している私は優奈です。その質問には簡単に答えられないです。順を追ってはなさないと理解してもらえないですし。そんな些細なことより、あの……、私たちと付き合って貰えませんか? 」
上目遣いで、白いほほを真っ赤にして、恐ろしいことを言う。今はストレートの黒髪のつぶらな瞳のいつもの海里さんだ、しかも、初めて挨拶をした時のように、僕と話をしてくれる凄く優しい感じだ。だけど私たちって?
しかし、どうしてこんな美少女が僕なんかと付き合いたいって言うんだ? さっきからの奇行といい、ドッキリなのか? どこかにカメラがあるのか?
きょろきょろしている僕を見て、さらに海里さんが追い打ちをかける。
「ダメですか? 私たちとだと…… 」
もう、ドッキリでも構わない。こんな美少女に告白されて受けない男がいる訳がいない。
ドッキリだとしても、笑いものになるより同情が集まるに違いない。確かにさっきの奇妙な現象など些細なことだ。
僕は腹に力を入れ、いざという時、また雰囲気が変わる。今の雰囲気のままいつの間にか髪もハーフアップにして知的な雰囲気だ。
「ごめんごめん。混乱して考えがまとまらないんだろう」
言葉遣いに切れがあり、今度はとても聡明な物言いだ。
「私は結奈。私は優しいの優と違って、結(むす)ぶの結だ。優奈全体の頭脳と言えばいいかな。真治君なら、優奈の秘密を言っていいものか全員で相談して知ってもらった方がいいという結論になった。
優奈はね、多重人格者なんだよ。今は、解離性(かいりせい)同一障害っていうのかな。もとの人格は、優しい優奈が一番近いかな。彼女は乙女だから、乙女チックな夢見る年ごろなんだよね。
彼氏が欲しいみたいなんだ。
まったく、彼女が多重人格者になった原因って、男に強く言い寄られて困ったり、小さい頃には危うく誘拐されそうになったりで、危険な目に遭って来たから、心に強いダメージが残ってこうなったていうのに。
悲惨なトラウマは私たちに押し付けて、本人はケロッ。まったく、困ったものだよ」
「多重人格者? 良く分かりませんが、美少女も大変なんですね!」
今の話を聞く限り、そんな感想しか浮かばない。
「そう、かなりね。学校の普段の人格は雄奈、雄(オス)の雄。彼女は男みたいに冷たいからね。天翔学園の氷華ね。それから、今、君に告(こく)ったのが優奈、あと、俺って言っていた勇奈は、武闘派でね。あと、超恥ずかしがり屋で、怖がりの夕奈、そして、結(むす)ぶと書いて結奈の私、あの二人居てね。全部で七人だ。
とりあえず、優奈を出すからさっきの返事をしてあげてよ。
でも、そうだ、言っとかないと、なぜ君が告られたか理解できないよな。こんな感じだけど別にからかっているわけじゃないんだ。
君が選ばれた理由はね、私たちは好みがうるさい上に、バラバラなのよね。仕方ないから、私が演算して、みんなの好みの顔や性格を合成したら、君になっちゃたんだ。誰の好みからもかけ離れているのに」
やっぱり、僕は、からかわれているのか? しかも好みからかけ離れているって言っちゃてるし。
「あの、鬼無くん。びっくりした。でも、私も含めて、みんなあなたのことが大好きみたいなの。早く返事を聞かせてください」
すでにその覚悟はできている。たとえ優奈さんが多重人格者としてもだ。
「優奈さん。俺も優奈さんのこと一年前から大好きでした。こちらこそよろしく」
僕は、優奈さんに差し出された手を握り返す。
「こら、童貞、私の体に触れたな。私も男の人に触られたのは久しぶりだから、ちょっと濡れちゃった。あっ、あたし、ビッチで、遊ぶと書く遊奈です。優奈まだ処女だから、気安くさわるなよ。まだ、未開発だから」
そんな雰囲気をぶち壊すように話す優奈さんは赤茶色の髪に、アイシャドウと真っ赤なルージュを引いたような妖艶な女性だった。
なんだこの人は? それに何が未開発なんだ? 雰囲気ががエロすぎる。いや、それいじゅに思わずいい情報が手に入った。
「ちょっと、何言ってるのよ。もう、恥ずかしい……。そうだ、鬼無くん。さっき、勇奈が言ったように、私を呼ぶときは、優奈でいいからね」
今は、顔を耳まで真っ赤にしてゆでだこのようになっている。これは優奈さんだな?
その後、優奈さんと色々話をした。特に気になっているのは雰囲気がコロコロ変わるのは女優顔負けの美貌を持つ優奈さんなら演技だと納得することもできる。まあこの場合は僕をからかっていることにが決定なんだろうけど……。
でも、髪の色や瞳の色が変わるのは常識ではありえない。そのことを云うと結奈さんが答えてくれた。
「私たちは人格が加わるたびに、使用できる脳の領域が増えていって、今では90%を使えるようになったのよ。一般の人は10%ほどだからね。私たちは超能力者なんだよ。それで外見もそれぞれの好みにイメージどおり変えることが出来る。みんな、君に一番見てもらいたい容姿になっているんだ。通常は中身が入れ替わっても外見は変えないんだけどね。超能力の方は……、付き合ううちにおいおい分かってくると思う」
そんな風に常識外れの回答をされても……。
確かに脳の領域を100%使えればテレパスとかテレキネスとか透視力とか超能力が使えるとかいう説があったけど、あの説は本当だったのか? 曲がれ曲がれと念ずるより曲がった状態を強くイメージすることが大事だって言っていたような? イメージするのに脳が活性化している必要があるんだけど……。それに僕に見てもらいたい容姿だって? 細胞さえ変質できるってことだよな……。まあ、確かにアメコミにゴム人間の超能力者はいたよな。ゴムゴムの実の人は実は2代目?だ。
ちなみに変身するときに裸になる女の子はサイボーグで超能力には関係ない。
とそんなどうでもいうことを考えてしまうぐらい、そこはそういうことだろう話を置いておくしかない。
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