第2話
コチラの所在を明らかにしないために空対空レーダーは切ってある。
日本製のナビゲーターを使用しているので「竹島」まではの飛行経路は問題ない。問題は途中どこで日本空軍機に捕捉されるかだ…
意を決して、日本国の領空に侵入する。案の定、領空侵犯を行ってから、ものの30秒で国際無線が入り、英語とロシア語と中国語、最後にK国語で誰何を受けた。
「貴機は日本国の領空を侵犯している。国籍と所属を明らかにせよ…」
-K国語は最後かよ…いまさら、誰何せずともわかっていように…
-それにしても、邀撃機の機影は確認できない。まあ、この夜陰であれば向こうもわからないだろう。
「これより、警告射撃を行う…」
-おいおい、冗談だろう、この暗闇で警告射撃なんて…
ガガガガガガガガ~
いきなり、キムチイーグルの機体右を蛍光弾が掠めていった。キム某中佐に戦慄が走った!
-なんて事だ!奴等にはコチラが見えているって事か…!
-それに一体何時の間にコッチの後ろについたんだ…!
-今の警告射撃で少なくとも、敵機が「後方」についている事はわかった…
-しかし、一体何機、追尾しているんだ…
「全機散開せよ!」 キム某中佐は編隊長として、2、4番機に命じた…
しかし、ここで一つの「事故」が起こった。
キムチイーグルは各機が「対地攻撃」仕様として翼下に通常爆弾を満載し、過重状態になり、機動飛行が鈍重になっていた。
2番機のパイロット、ファン某少佐は低空飛行で海面まで余裕がないため、機首を上げながら、爆載で重い機体で急旋回を行ったため失速をしてしまった。
かなしいかな、K国のパイロットの訓練不足は如何ともし難いものがあった。
虎の子のキムチイーグルに万が一のことがあってはならないため、各パイロットの訓練は通常の機動飛行に限られている。
しかも、アメリカからの援助を打ち切られて、補充/代替備品が限られているキムチイーグルでは過重での機体損耗を防止するため、
爆載しての訓練飛行は数えるほどしか行っていなかった。
2番機のファン某少佐とコ某中尉は、失速したキムチイーグルを立て直すこともできず、そのまま日本海に墜落していった。
******
「ファン少佐!コ中尉!」キム某中佐はマスクの下で叫んだ。
漆黒の日本海では墜落した機体を確認することもできず、それ以上に邀撃の日本国防空軍機に追い立てられ切羽詰っていた。
-仕方がない!
キム某中佐は生き残った4番機に対し
「対地攻撃兵器を遺棄し、空対空戦闘に移行せよ!」
性能で劣るキムチイーグルとは言え、この混戦模様で機体重量を軽くし、接近戦にすれば少なくとも一矢報いる望みはある…あるいは、この夜陰に紛れて彼我の区別もつかず、少なくとも逃げ帰るチャンスはある。
そう考えて、キム某中佐は相手の機種、機数を把握できないままドッグファイトを挑んだ。しかし、悲しいかな、整備不良はここでも現れた。頼みのK国製の電子機器を組み込んだ空対空ミサイルが肝心のこの時に沈黙してしまった。相手戦闘機のエンジンの熱源を感知/追尾するシーカーが作動しない…
いや、それ以前に有視界戦闘にならざるを得ないドッグファイトだが、この新月の夜、漆黒の闇の中ではキムチイーグルのパイロットは日本国防空軍機の機影を眼で追うことすらできない。
しかし、機銃掃射だけだが、日本軍のパイロットの狙いは正確だ…次から次へとキムチイーグルの機体を尖光弾が掠めていく。なぜ自慢の日本製高品質の空対空ミサイルを使わない?キムチにはもったいないってのか?くそー…
-それにしても陸戦用のナイトビジョン(携帯暗視装置)にしては視野が広すぎる…
-そうか、日本国防衛省技術研究所開発の「ナイト・キャノピー」か…
-キャノピー全体にコンピューター処理された暗視画像を投影し、夜間の空戦機動にアドバンテージを持たせた機体だ…
-技術先進国・日本といえども、実用にはまだ、時間がかかると言われていたが…
-精々、相手戦闘機の照準を避けるべく、派手な空戦機動を続けるしかない。
キム某中佐は生き残った4番機に対し
「命令を撤回する!ケツを振って相手の照準から逃れて日本国領空から離脱しろ」
「了解」
4番機の主パイロットであるクォン某中尉から返事が返ってくる。
作戦開始直前に姿をくらました副パイロットはイ某少尉だったな…
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