第7話 新たなる問題

 商品の量産して一週間後、山のように商品を荷車に積んだ。

 今回はわたしも町まで着いていくことにした。



 寂しそうに見てくるラピスを撫でて、



「少しだけ待っててね。すぐ帰ってくるから」


  

 かなり歩いてイゾリア国の東の大きな街テルカーに着いた。



 はあ、疲れた......アモスさん1日置きにここまで来て売っていたのね。 大変だわ、ポーションでも渡しとけばよかったわ......



 さっそく街の役場に行き販売許可証をもらい、許可された場所で、販売を始めた。 大勢の人が行き交う通り、アモスさんは一際大きな声で、



「どうだい! この商品! うちの店のが一番だ! 寄ってみてってくんな!」



 そう呼び込みをしていた。わたしも恥ずかしかったけど、勇気をだして呼び込みをした。



「いらっしゃーい、竜の洞窟店でーす! ポーションやお薬、温石、吸水ホウキ、吸水傘、他にも珍しい道具ありますよー」



 二人が呼び込みをしていると、一人二人とお客さんが覗きにきた。 そして、一人の婦人が聞いてきた



「これ見たことないけど、何?」



「それは、乾風具といって、こうやって押すと風が出るんです!」



「へえー便利そう、こっちは?」   



「これは保冷箱で中に食べ物なんかを保存できる物なんです」



「うーん、良さそうだけど......今はやめとくわ、ポーションと温石くださる」



「あっ! はい、お買い上げありがとうございました!」



 みんな興味こそ持ってくれるが買いはしなかった。肩をおとすわたしに、



「大丈夫だぜ店長! 絶対に品はいいもんなんだ! 必ず買って貰えるさ」



 そうアモスさんに励まされ、



「そうだね! まだまだ売り始めたばかりだし、頑張ろう!」



 そう気持ちを切り替えて呼び込みの声を出した。



 お昼頃になって、持ってきたお弁当を二人で食べてるとき。 少し気になっていたことを聞いてみた



「アモスさん、この国にご家族がいるんだよね。 会いには行かないの」



「......ああ、たまには行ってるよ、でも......」

  


 口ごもったアモスさんを見て



「ううん......ごめんなさい立ち入ったこと聞いちゃって、さあ昼からもじゃんじゃん売ろう!」



 お昼過ぎ多くの人が集まってきたが、新商品はひとつだけしか売れなかった。

 


 やっぱり高額だし、どんな風なものかわからないものにお金は出せないのかも、どんなものなのか分かれば......



 よし!



 近くの井戸から水を汲むとお客さんの前で頭から浴びた。 驚くお客さんに、



「こんなにびしょびしょになりました。でも、これがあれば大丈夫」



 そう言って乾風具を使って乾かし始めると、みるみる髪が乾いていった。 それを見たお客さんは、



「これ売ってくれ!」



「わたしも!」



「こっちもくれ!」 



 とつぎつぎと購入希望者が現れ予約者も殺到した。売りきれたのが分かると、



「こっちの箱はなんなんだい?」

  


「これは、保冷箱で、食べ物なんかを冷やして保存できるんです」



「うーん、あんなすごい道具作るんだからこれもすごいだろうね、よし! ひとつくれないか!」   



 そうやって、こちらも売りきれ予約者ができる程で、こうして、今日は全ての商品を売りきることができ、8000ゴールドほどを売り上げた。



 お客さんが帰り店じまいをしているとき、



「無茶苦茶だな店長、風邪でも引いたらどうする、体の事は考えてくれよ」



 少し不満げにアモスさんが言った。



「商品の良さを実感しないと売れないと思ったの、はい4000ゴールド』 


 

 そうお金を渡そうとすると、アモスさんは拒んだ。



「いや、受け取れねえこんなには......」



「何言ってるの? ほとんどアモスさんが作ったものじゃない、作業代も含んでるし、妥当だわ」



「......すまねえ店長、あの、ちょっとだけここで待っといてくれるかい......」



「あ、うん、大丈夫待ってるよ」



 アモスさんが歩いて行く姿をみながら、さっきからそわそわして見えたから、多分ご家族に会いに行くんだなあと、わたしは思った。



 それからかなり待ち、辺りが暗くなっても、アモスさんは戻ってこなかった。



 どうしたんだろう......こんなに待っても帰ってこない。おかしい......探しに言った方がいいかな。



 そう思い、入れ違いになった時のため、書き置きを荷台に残して、わたしはアモスさんを探しに出た。



 街中央からアモスさんの向かった方に歩いて行くと、下町のような民家が左右にひしめいている場所に着いた。 道が入り組んでいて、迷いそうになりながらも、進んでいくと、争うような声が聞こえる。



「やめろ! それは、大切な金なんだ! 頼む返してくれ......」



「うるせえよ、お前が借りた金なんだろ、この金は利子として返してもらう」



「利子って、元本が減らないじゃないか!」



「そういうとこに借りるおめえが悪いんだよ」



 細い路地に複数のガラの悪い男達に囲まれる、アモスさんがいた。



「待ちなさい!」



「あ? なんだこの小娘」



「て、店長......来ちゃいけねえ」



「店長、そうか......の道具屋の......」



「あなた達、アモスさんに何してるの!」



「いやー店長さん、うちはただの金貸しでしてねえ、この人に貸した金返してもらってるだけなんですよ」



 そうにやにやしながらこちらを見てきた。



「貸したお金っていくらなんですか?」



「100万ゴールドですよ、ほらこれが証文です」



「100万ゴールド!?」



 確かに証文があり、100万と書かれている。



「あなたが肩代わりして頂けるなら、かまいませんけど、関係ないならすっこんどいてもらっていいですか」



 そう言うと大柄な男は仲間に指示して、アモスさんを殴らせた。



「やめて!」



「......ダメだ、店長こいつらに関わったらいけねえ」



「......分かったわ、そのお金必ず返します」



「はっはっはっ! こりゃ傑作だ! いいだろう! 返すのは一ヶ月

後、返せたら利子もなくしてやるよ」



 そう仲間と笑いながら去っていった。



「大丈夫、アモスさん!」



「なんてことだ......あいつらはゼブル協会ってゴロツキの集まりなんだ......店長まで、巻き込んじまった」



 わたしは、かなり殴られたらしいアモスさんに肩を貸し、アモスさんの家に向かった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る