第6話 更なる商品

 夕方、アモスさんが商品は全部売りきれた喜んで帰ってきた。

 売り上げは3000ゴールドだった。

  


 半分渡そうとすると断ったので、これは職人として作業代として無理矢理渡した。



 そして夕食時、わたしが考えた試作品をアモスさんに見せると、腕を組んでじっくり見ながら、



「ほう......なるほど、こりゃよく考えたな、確かに売れそうだ。 温石も欲しいやつはいくらでもいそうだし、いけるんじゃねえか、ただ、布巾は作るのが難しいな......」



「やっぱりか......でも、温石、吸水ホウキは商品として追加しましょう!」



「おれも一ついいかな、乾燥するなら傘にぴったりだと思うんだが......」



「なるほど確かに! 温石はわたしが作ったので、他のをお願いします」



「わかった! じゃあホウキと傘は作ろう!」



 アモスさんがホウキと傘を作っているそばで、わたしはポーションを作り続けた。



 それから二週間、1日置きに出店すると、アモスさんの口上のお陰なのか、商品はほぼ完売、42000ゴールドを売り上げた。



 順風満帆に見えてた商売だったけど、風向きが変わってることに、まだ、私達は気づいてなかった。  




 次の日いつものように元気に出掛けたアモスさんだが、夕方元気なく帰ってきた。 商品も半分しか売れてなかった。



「大変だ......店長、やられた、真似されてる」



 どうやら私達の商品が真似されて売られているという、大きくて有名な店にそれをやられると、わたし達のような小規模の店は太刀打ちできない。



「わたし達は、作製者として権利が守られないからだわ。 商人ギルドに入っていれば、権利は保護されるんだけど、わたしはディスバラエルでは退会させられてるし、イゾリアのギルドにも入れない......」



「まあ、おれも職人ギルドを辞めさせられてるしな......町に売り上げの10%払えば商売はできるが......」



「うーん、どうしよう......もう真似されづらいものを売るしか無いわね。とりあえず、ポーションは売れるし、他の商品を考えましょう!」



「だなっ! くよくよしてても始まらんし、何とか次に繋げようぜ!」



「ええ!」



 そうは言ったものの、新しい商品なんて、一体どうすれば......材料は1日置きに手に入れてたからアモスさんが作った倉庫に大量にあるけど、新しいのはやめて、値段を下げて数を売るべきか、それともより手を加えて高値で売るか、うーん......



 わたしがそう悩んでいると、なあ店長とアモスさんが聞いてきた。



「あの前に言ってた洗濯物のことなんだけどよ......」



「何か案があるの!」



「まあ、風車みたいに板を円状にすれば形はできるが、人力じゃなあ、なんか動力になりそうなもんはねえのかな」



 動力......そうね、熱と風か、でもどっちも弱いわ。 何か強くする......いや、弱くても長く機能させるには......そうだ!



 わたしは、蒼魔石と風纏鉱を重ね合わせてみた。 すると、風が途切れず吹き続ける。



「なるほど! それなら風を送り続けられる! だったら木でラッパ状

のものを作って風を集めたら強く出せるな!」



「うん! それ髪を乾かすとか、色々使えそうだわ! それに、蒼魔石と風纏鉱は同時に扱っている商人も少ないはず」



「よしさっそく! 試作品を作ってみよう!」



 そういって、アモスさんは作り始めた。



 持っているものを組み合わせて作れば何か出来るかもと、わたしは冷水晶に蒼魔石を合わせてみると、



「冷たい!」



 冷水晶は魔力を得て更に冷たくなった。



 これなら大きな箱に入れて、肉、魚、野菜、傷み易いものを中に入れて保存できるわ! 

 さっそくアモスさんに伝えてみた。



「なるほど! そりゃあ面白い! できたら必ず売れるぜ! あと、こっちも何とか形はできた試してくれ」



 出来上がった木の板を張り合わせたラッパ状の物に縦に持つ柄がある物を渡してくれた。

 


「その柄にある蒼魔石を押すと中の風纏鉱に当たって風がでる」


 

 そう言われてわたしは押してみると、強い風が途切れず続いた。

 


「すごい! 出来てる! ただこれどう止めたら......」



「蒼魔石と風纏鉱の間にバネを置いて、柄の方に蒼魔石に被せて押さえる物を取り付けたら大丈夫だと思う」  



「じゃあお願い! これで、なんとかなりそう!」



 そうして、わたしは冷水晶と蒼魔石の冷気の調整、アモスさんがラッパの改良をしながらその日は徹夜した。




 次の日

 

 

 出来上がった試作品を試してみた。

 とりあえず、蒼魔石と風纏鉱の方は乾風具かんふうぐ、冷水晶と蒼魔石の方は保冷箱ほれいばこと名付けた。



「じゃあ乾風具を使ってみるね」



 わたしは乾風具を手に取ると、蒼魔石を押してそれに被せるように木の板をずらした。


 

 ブオオオオオと風が吹き出し、置いておいても風が出つづけた。



「やった! 出来てる!」



「ああ! これなら売りもんになる!」   


 

 二人で喜んだ。

 

 

 次に保冷箱に昨日入れた魚を見てみると冷たく、切ってみると身の色も変わってなかった。



「どうやらこっちも大丈夫みたいだな! 作れるのは1日3個ずつぐらいだが、真似される心配もないからな」



「そうね、壊れないかぎり使えるし、他の商人が仮に真似できたとしても先に売り切れる! 値段は300ゴールドならどうかしら」



「ああ、かなり手頃な値段だと思う、とりあえず量産しよう」



 そうして、その後の一週間は二人で二つの商品を量産することにした。


                       

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