第5話 ランキング上昇!
翌朝。
血だらけの肩鎧を丁寧に洗ってから眠りについた俺は、起きてすぐに冒険者ギルドに向かった。
下級冒険者ギルドはその名の通り、下級の冒険者が利用するギルドだ。人数が多いためいくつかあり、俺がいつも使っているのは第三支部。
下級と中級の境目は“50000位”だ。
冒険者ランキングを基準として、冒険者は分けられている。
「昨日はウルフ一匹とラビット八匹倒したからな……。頼む、上がっていてくれ!」
逸る気持ちを抑え、人込みをかき分けてランキングボードの前に立つ。
壁面に並ぶボードの一番端。俺の定位置と化した最下位の欄には……違う名前が記されていた。
「最下位じゃない! じゃあ、俺の名前は……」
一つずつランキングを遡っていく。
「あった!」
ようやく自分の名前を発見した。そこには。
『91992位 エッセン』
と記されていた。前回見た時よりも、五千ほど上昇している。
「よっっしゃぁああ!」
いきなり叫び出した俺に、周囲の冒険者がぎょっとする。
でも、叫ばずにはいられない。だって……四年間ずっと最下位だったのだ。
半分諦めかけていた。俺には無理なんだって思う日もあった。
でも……まだ夢を見ていていいらしい。
「ポラリス、待ってろよ。絶対、俺もそこに行くから」
九位に煌々と輝く名前を見て、小さくそう決意した。
「のんびりしている時間はないな。四年間も遅れを取ったんだから」
ランキングが一気に上がったのは嬉しい。だが、まだまだ上にいる。
そもそも、下のほうはほとんど活動していない冒険者も多い。一日の狩りで五千も上がったのはそのためだ。
これからは、実力のある冒険者が立ちふさがることになる。
「楽しみすぎる」
冒険者ってこんなに楽しい職業だったんだな。続けて良かった。
ギルドを出て、昨日と同じ“白霧の森”に向かう。
さすがに、いきなりランクの高いダンジョンに挑戦するほど自惚れてはいない。ランキングを上げるためには高ランクダンジョンの攻略は必須だが、きちんと段階を踏んでいかなければ危険だ。
急ぐ必要はある。しかし、焦ってはならない。
「今日の目標は、大牙と健脚のレベル上げだな。なるべく高くしてから次のダンジョンに挑みたい」
あとは他の魔物も発見できれば、新しいスキルの取得に繋がる。
“魔物喰らい”は本当にすごいギフトだ。今までハズレだと思っていてごめんよ……。
ほどなくして、森に到着した。
結界を通過し、さっそく狩りを開始する。
「“フォレストウルフの大牙”“フォレストラビットの健脚”」
足と歯に、それぞれ魔物の力を宿した。
傍から見れば奇妙な見た目をしていることだろう。足は服に隠れて見えないが、口元には巨大な牙が剥き出しになっているのだから。
「他の冒険者は……いないな。よし」
ダンジョンは無数にある上、冒険者は人気の場所に集中する。“白霧の森”は薬草くらいしか旨味がないため、不人気なのだ。薬草ならもっと上位のダンジョンで、より良い質のものが採取できる。
その分、競争が少ないので俺は足繁く通っていたのだが、今回もそれが功を奏した。
あまり人に見られたくないからな。
「……いた。フォレストウルフだ」
結局、昨日は最初の一匹以外には遭遇しなかった。
あの時は無我夢中で取っ組み合いながらなんとか倒したけど、ギリギリだった。
少し強くなった今なら……。
「勝てる。……よし」
膝を少し折って、足に力を入れる。
“フォレストラビットの健脚”の感覚はもう慣れた。全力で地面を蹴れば――風になれる。
「グル!?」
俺の接近に気が付いたフォレストウルフが、慌てて身構えた。しかし、もう遅い。
ウサギは方向転換も得意だ。瞬発力を生かして、ウルフの背後に回りこむ。
「いただきます!」
背中に飛び乗り、首筋に牙を突き立てた。
うん、やっぱ不味いな。特に毛が口の中に入るのが不快すぎる。
だが、俺のギフトは肉だろうと毛だろうと関係なく消化することができる。
そして、吸収された肉は俺の力になる。
「よしっ、圧勝!」
この日は太陽が傾くまで狩りを続け、魔物を喰らった。
“フォレストウルフの大牙” LV6
“フォレストラビットの健脚” LV10(MAX)
“フォレストバットの吸血” LV2
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