~終幕~
獣吼の咎者
ニューヨーク〈エンパイアステートビル〉上層階──。
オフィスライクな
「柄じゃないんだよなぁ……」
「そう言うな。ここまで旗頭と率いてきた以上、責任がある」
近隣勢力とのパワーバランスは崩れ、これ
この流れは、ラリィガ達〈ダコタ勢〉にも好機であった。
これまでの守り
戦力としては頭数が少ないものの、ダコタ周辺の勢力には背後からの奇襲策と機能したようだ。
途中に下した勢力には彼女へ寝返る者も少なくなく、進めば進むほど大所帯と
そうした増強背景も、快進撃成功の
が、それは結果としてラリィガの閉塞感を誘発した。
元来、自由奔放が好きな気質だ。
父親代わりのシュンカマニトゥから見れば、よくもここまで
だが……限界が来た。
「アタシはイヤだかんな! 〈領主〉とか〈盟主〉とか……絶対やんない! クソメンドクサイ!」
「投げっぱなしにも出来んだろう? 皆、
「勝手に着いてきた!」
「オマエは受け入れた」
「ぅぅぅ~~……」
苦虫顔の駄々が渋る。
シュンカマニトゥにしてみれば、
「
「
想いを汲み、獣精は「ああ」と静かなる同調を示した。
あの激闘を通じて〝夜神冴子〟へ感情移入を
いつしか彼自身も憎からずに
(不思議な娘だ……とんでもない
あの〈
「なぁ? シュンカマニトゥ?」
「何だ?」
「……アタシが勢力を立ち上げれば、少しは
「ラリィガ?」
「だって……
純朴な素直さに
「ああ、たぶんな」
正直、それはどうだか分からない。
さりとも、シュンカマニトゥには確信がある。
この娘──ラリィガは、決して私利私欲には
例え〈領主〉になろうとも……。
それは、
「よしっ!」一転に気合いを入れて、ラリィガは両頬を叩いた。「んじゃ、やってやるか!」
「ほう? やる気が出たようだな?」
「た・だ・し! アタシは、アタシのやりたいようにやる! 他勢力の体制なんか知らないよ! ワンマン結構! それがイヤなら出てってもらう!」
「フッ……いいんじゃないか? その程度の
「言っとくけど〈
「ふむ? オマエは?」
「……
最大の難所と構えられる北米を占める新勢力の出現は、あれよあれよと名を
不用心に街路を歩む
小柄な美少女であった。
黒を基調とした衣装は高い肌露出に色香を
嗜好の
さりとも、活気を生む人の気配は皆無だ。
見飽きた。
常態的な街路の
左右を
しかしながら、好奇心は刺激される。
こうした場所にはトラブルが巣食う。
鮮血の臭いを
だから、彼女は足を踏み入れた。
退屈な世だ。
些細な刺激でも
はたしてハズレを引いたか……。
腰の
と、気配が匂う!
即座に少女は、その場から
左手で路面を支えた後転ながらに、右手では真紅の
先刻まで居た地面が銃撃の閃花を白く咲かせた!
頭上からの奇襲!
何処に潜んでいたかは知らないが、襲撃者は建物上階から降って来た!
どうでもいい。
高揚が
フォーマルスーツの女!
タイトスカートの脚線美が回し蹴りを繰り出す!
リーチは長い!
だがしかし、当たってやるほど
潮の
その尖端に微々と
二撃──三撃──流れるような連続蹴りが空気を裂く!
その総てを
瞬間、不可視の壁に
沸いた!
その悦を
相手の首筋を
そこで寸止めを
まったく同時のタイミングで、少女の額には
白銀の銃──。
珍しい。
永い流浪でも、こんな武器は他に知らない。
そして、
嘘のように躍動は氷像と鎮まる。
「またキサマか」
皮肉めいて淡い高揚を
やはり
「そう邪険にしないでくれるかなぁ?」
朗々とした挑発を向けるも〈
「しつこいものだな……何度目だ?」
「さぁて? 興味無いし?」
「ま、
「ねぇ? 〈
「何だ」
「……ダルムシュタッド、村人、十六人」
「……何の
「チッ! また
冴子の首筋に添えられた
相手の眉間に標準を定めた白銀の聖銃──。
はたして、どちらが仕止めるのか……。
「キサマには、色々と
「そうね、とりあえず──」
無粋に
「「──まずはコイツらを倒してから!」」
前後の
運命の出会いが背中を預けた!
[完]
獣吼の咎者 凰太郎 @OUTAROU
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