何が薬になるか(12月21日分)

カルンの国を発ち、南東に向かい始めると急に暑くなってきた。

北は遅い春だが、南ではもう初夏で、景色はどんどん色鮮やかになっていく。

草木がたくさん芽を出し、花を咲かせ、葉を伸ばしていた。

それを見たフランは、たまに道を外れてやぶに突っ込むようになった。


最初は何事かと思ったが、彼が取って来るのは薬になる植物だ。

俺には魔法がまるで効かないし、同じく魔法で作られる薬も効かない。

毒にも強くて薬草も半端はんぱな量では効かないが、それでも熱冷ましは効いたので、これから旅をするなら薬草を覚えた方がいい、と言われた。

確かにフランが来なければ危なかったので、俺は道々それを教わる事にした。


話を聞いてみると、薬草と言っても色々あるらしい。

植物の葉や茎、皮、花や実など、効果がある部分と無い部分があるし、そのままでは使えないものもある。

それにザードの国で塗ったマーニ油も、料理に使えば薬の代わりになると言う。

以前カエルを食う時に使ったスパイスや香草も、体調が悪い時に使えるものらしい。


「毒だって薬になるし、薬だってり過ぎれば毒だけど、君の場合は量がまだ不明だね」

そう言いつつフランは、人間にとって毒になるもの、薬になるものを書いた手帳をくれた。

冬の間にもう一つ手帳を買い、俺のために書いてくれたらしい。


その手帳を見るたびに思う。

フランの字はめちゃめちゃ汚い。これだけ書くのは大変だっただろうな、と。

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