打ち明け話(12月22日分)

昼過ぎにフランの国、ルイベーユに着いた。

右を向いても左を向いても本屋だらけで、国の中心には塔がある。

その塔は巨大な書庫らしい。本に埋もれているような国だ。


組合に報告を済ませると、フランに「翼と爪」へ招かれた。

彼の私室ししつに入ると、並んでいたのは植物の葉や実、土や油や水などだった。

どれも薬になる物ばかりらしい。

これを使って何をしたいんだ、とくと彼は目を細めて外を見た。


この大陸では医者と言えば魔法使いの事で、薬も魔法で作られている。

だが500年前はそうではなかったという。

人を癒す方法はもっと様々だったし、その知識も広く知られていた。

しかしいつの間にかすたれ、今や病気も怪我も魔法使い頼みだ。

だからそれらの知識を集め、本にして人々の役に立てたい、とフランは語った。


「ただね、そんな昔の事を僕が知ってるのは不思議だろ?」

と言うと、フランは俺の正面に立った。その姿が一瞬で変化した。

淡い紫の瞳に尖った耳、灰色の髪に顔の細い、色白の青年になったのだ。

なんと彼の正体は、地上に戻って来たエルフだと言う。


またすぐ元に戻ると、彼は悪戯いたずらに成功した子供のように笑った。

俺は思わずぽかんとしたが、しばらくしてハッとした。


彼の研究を今、一番必要としているのは俺だ。

だから俺を招き、自分の正体までさらして打ち明けたんだろう。

だがそれは彼にとって、とても勇気のいる事のはずだ。

それほど俺を信頼してくれているのだ。何よりそれが嬉しかった。

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