ミダ祭り(12月20日分)

雪が降らなくなって、風が暖かくなってきた。

あちこちで雪が溶け、草花が顔を出している。

道に積もっていた雪はすっかりどかされ、商人もやって来るようになった。


このごろ外を歩いていると、細い枝をした木に赤い小さな花が咲いている。

「ミダ」と呼ばれるその花が咲くと、北の国では一年が始まるそうだ。

他の土地より遅いそれを祝って、この辺りでは「ミダ祭り」が行われるという。

その準備で最近は仕事がドンと増えた。


星誕祭の時と同じような飾りつけもあるが、何より街中まちじゅうに屋台という、骨組みと布だけの簡単な店を建てるのだ。

売るのは主に食べ物で、それぞれの家で違うものを毎年準備するそうだ。

冬の終わりに食材が減ってくる頃、街の真ん中で食料を交換し合っていたのが始まりらしい。


最近ではこの祭りに、よそからやって来る商人が参加したり、雪の中でしか作れない食材を求めて来る者も増えて、いっそうにぎやかになったという。

組合ではその護衛の仕事が増えて来たので、俺もそろそろ移動する頃合いだ。


などと考えながら旅立つ準備をしていたら、組合で突然フランに呼ばれた。

また国へ戻るつもりで、寄り道せずに真っすぐ南東へ向かいたいらしい。

だが運が悪いのか、同行させてもらえる者がいないので、護衛の依頼をしに来たのだ。


二つ返事で受けた。

フランには散々世話になったし、恩を返すいい機会だ。

絶対とは言えないが、出来る限り守ると約束した。

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