熱が下がって(12月15日分)

今日は目が覚めると暖かくて、体が楽になっていた。

寒気も感じないし気分もいい。熱が下がったのだ。

それで起き上がろうとしたら、ベッドの端でフランが座ったまま寝ていた。


びっくりして揺り起こすと、目を覚ました彼は俺の顔を見るなり「こんの大バカ!!」と怒鳴った。

「こんの」にやたらと力を込めた言い方で、両手を握りめていた。

よく見るとその手がぶるぶる震えていた。

しかもうつむいたまま泣き出したので、しばらく頭を撫でた。


「ここまで来れば材料の毛皮はいくらでもあるから、君に特注の防寒着を作るよ」

と言ってフランは裁縫師さいほうしを呼んで来た。

もう熱も下がったしこっちから行けばいいだろう、と言うと拳骨げんこつを食らった。

頭が真っ二つになるかと思った。

食事を持って来た宿の主人も、彼の後ろで何度もうなずいていた。


このカルンの国から北では、夏は短くすぐ冬が来るそうだ。

道理で一気に寒くなったはずだ。

白山熊の冬毛で織った分厚い織物と、雪狼ゆきおおかみの毛皮を使った防寒着がないと、慣れた人間でも寒さで体を壊すらしい。


防寒着ができるまでは外に出るな、と厳命げんめいされたので仕方なくベッドに戻った。

そんな俺に、フランは「熱冷ましの薬草だ」と言って固い緑の葉を見せてくれた。

魔法が効かない俺たちの国にも薬草はある、と話していたのを思い出して、最後の手段で使ったらしい。

ああ、俺は彼のお陰で生き延びたんだ、とようやく分かった。

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