星誕祭の準備(12月16日分)

やっと防寒着が出来上がった。これで外に出られる。

と思ったら、外に出ると世界が真っ白になっていた。


なんだこれ、とフランにくと「雪だよ。冬の雨みたいなものかな」と言われた。

砂の塊のような手触りだが、とても冷たい。

踏むとギシギシ音がする。歩くのが面白くなった。


さて出掛けるかと思ったが、何日も寝ていたせいか、体が思うように動かない。

それで何か仕事はないかと街へ出てみると、すぐ知らない婆さんに呼ばれた。

なんでも星誕祭せいたんさいという祭りが近く、その飾りつけの最中らしい。


婆さんによると、遠い昔は星がなく、二つの月が隠れる夜は、空が真っ暗になっていたそうだ。

地上の者たちがその日を怖がるので、神様が小さな光の粉をたくさんいて、それが星になったらしい。

それから毎年、星が生まれた祝いをするそうだ。


最初に婆さんの家の飾りつけを手伝ったら、すぐまた別の家でも呼ばれた。

手伝ってくれたら昼飯を出すよ、お駄賃だちんを出すよ、と次々呼ばれた。

高い所の飾りつけに、俺の背の高さが丁度いいらしい。

日が暮れて宿に戻ると、フランが心配顔で宿の前に立っていた。


フランは「いきなり無理しちゃダメだよ」と言って、小さな袋をくれた。

「早いけど星誕祭の贈り物。良ければ使って」と言う。

中身は新しいインクと手帳だった。

手帳はまだ書けるが、インクはそろそろ無くなりかけていた。

礼を言うと、フランは照れたように笑った。

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