マーニの油(12月9日分)

最近かなり暑くなってきた。

今いるのは東の、獣人族の住む砂漠に近いザードと言う国だ。

風が吹くと砂がよく舞う、ほこりっぽい国だ。乾燥しているらしい。

そのせいか、体中があちこちガサガサしてかゆくなってきた。


俺の育った密林も暑かったが、よく雨が降るので乾燥はしなかった。

湿気を保とうと池で水浴びもしたが、水から出ると余計に肌が乾く。

困って組合の連中に相談すると、それならこの国の特産品がいいと言われた。


どこででも売っているから、と言われて街に出た俺は、すぐに納得した。

この国はあちこちに黒や緑の実を付けた木がある。

マーニという名のその木は、幹も葉も白っぽくて、乾燥に強いらしい。

その木の実は油が取れるそうで、あちこちの店で瓶に入った油が売られていた。


この国の者たちも乾燥には困るらしく、そのマーニを体に塗るそうだ。

しかも塗るのは一回に数滴でいいという。

実際に塗ってみると、豆粒ほどの量で片腕全体に塗れた。

他国の商人が売っている軟膏なんこうと違い、水のようにさらっとした油で、よく伸びるのだ。

喜んで買って帰り、全身に塗りたくった。


肌にすっと吸い込まれるような油で、ベタベタになったりもせず、痒みも止まった。

おまけにこの油は料理に使っても美味うまいらしい。

旅の荷物にはなるが、なかなかいい物が買えた。

だがやはり、次はもう少し涼しい国に行きたいものだ。

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