青い花(12月8日分)

アスバという国に着いた。

大陸の真ん中よりやや北東にある国で、畑が多く土地が開けている。

その割に人が多い国だと思ったが、大半は観光客らしい。

国のど真ん中に珍しい場所があるからだ、と組合で聞いた。


あちこちに案内の看板がある、と言われて行ってみるとにした。

実際に歩き出すと、道はほぼ一本道で、さえぎる物も無いのですぐに分かった。

そこで目に入ったのは奇妙な光景だった。


地面がまるで巨大なわんのように、大きくくぼんでいるのだ。

そして窪地の中には一面、見た事の無い青い花が咲いていた。


近付いてみると意外に大きい花で、手の平の半分ほどもある。

花弁はなびらは端が濃い青で、中心に向かうほど白くなっていた。

草丈は膝下くらいで、細い葉は緑だが、これも青に近い色だ。

その花が窪地一面を埋め尽くし、ざぁざぁと風になびいていた。


とても綺麗な景色だ、というのは俺も感じた。

まるで湖を満たす水のように、青い花が咲く様子は美しかった。

だがなぜかその光景を見ると、見てはいけないものを見てしまったような、奇妙に恐ろしい気分になった。


近くの看板にはこの地の伝説が書かれいていた。

この窪地は、元は本当に大きな湖で、かつてはエルフの国だったそうだ。

しかしエルフが浮上大陸を作った後、各地で水がれ、この湖も涸れ果てたという。


俺はビィーリャの言葉を思い出した。

彼があんな事を言った理由が、少しだけ分かった気がした。

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