北の国へ(12月10日分)

北西に移動してトリアンという国に来た。

この国はザードと比べると少し涼しく、乾燥もひどくない。

大陸全体から商人が集まるそうで、売り買いの人の声が絶えなかった。


そんな中、若い男の怒鳴る声がして振り向くと、なんとフランだった。

大人しいはずの彼が商人に声を荒げていたので、俺はどうしたのかと声を掛けた。

振り向いた彼は驚いたようだが、思い直したように商人に頭を下げた。


「恥ずかしいところを見せてしまったね。つい頭に血がのぼって」

と顔を赤くして言うフランはいつもの彼だった。


彼はこれから冬にかけて北へ向かうつもりらしい。

そのために例の商人には、1年前から防寒着ぼうかんぎ一式を頼んでいたそうだ。

だがいざ再会すると、頼んだ物は全て売ってしまっていたという。


北の国、それもかなり寒い地域に向かうつもりでいた彼は、当然困った。

だが「金は後払いだったし構わないだろう」と開き直られて、思わず怒ってしまったそうだ。


北へは俺も行ってみたいと言うと、フランは心配そうな顔をした。

夏の今は涼しいが、北の国の冬は猛烈もうれつに寒いという。

暑い南の国生まれの俺には、防寒着がないとダメだそうだ。

しかもこの国ではあまり売られていないらしい。


そこで例の商人が、それならと口をはさんで来た。

再び北へ買い付けに行くつもりだから、びの代わりにタダで運んでくれるという。

しかも二人とも、という話だ。

これで次の行き先が決まった。

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