第17話
私は新卒で保険の営業の仕事に就いた。
次長は厳しい女性だった。いつも前に呼び出されて怒鳴られていた。
それを見ていた同期がごそっと辞めていった。
逆に、私は仲のいい同期がそれなりに負けん気の強い子ばかりで、なんやかんや怒られながらも気に入られている私を叱咤激励してた。
私は恵まれているんだ。辞めるなんてとんでもない。課長もトレーナーも次長から愛されている。多分うまくいくんだと思っていた。
今思えば洗脳されていたな…上手くやらなくてはいけない組織の中で、私達はけっこう浮いていた。それを感じないように成績を出すことができれば問題はすべて解決すると思ってた。
異動やシャッフルが多かったのも次長がやりやすい組織を作るためだったんだ。
元々がブラック体質の会社なんだ。
上からうまく利益を出すために働かせて機嫌取って、上の男たちは気持ち悪かった。
ニ年目の体制は楽しかったけど、結局成績出せずに組織を解体された。
可愛がってた後輩も、後にいきなり業績上げたけど、同時にマルチ商法にも手を出していた。どうやらそこでのセミナーで話法を学び、営業にも活かしていたらしい。同期がそういうの辞めたほうが良いよと言ったけど、なぜですか?本業もこのおかげで成績アップしてるしお客さんも幸せなんです。何も悪いことなんてしてないでしょと聞く耳を持たなかったようだ。
私も営業をしてて、辛いことのほうが多かったしストレスばっかりでそれを解消するためにお金を使う方に意識が向いていた。そこでエステの勧誘に遭って断ることができなかったのは、売る買うを至上とする世界のなかで断っては駄目だと思いこんできたんだろうな。
自分を大事にするためにお金を使いたかった。
例えば、カウンセリングもこの時期に行っていればもっと自分の気持ちに向き合えたかもしれない。
ただ、ストレス解消でお金を使ったと言っても、この時期に旅行や宝塚歌劇を見に行ったことは自分を豊かにしたと思っている。そこは今いい方向で自分に返ってきている。
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