第11話

 捨てられないものが嫌いだ。特に贈り物。


 父は、兄の彼女にネックレスを贈ると、それをつけてくるか見てこいと私に言った。

 母は、私が人にもらったタオルなどをもうボロボロになったからと捨てようとしたら止めた。

 なぜ人にもらったからといって、そんなに贈り物に対してありがたく思わなくてはいけないのか疑問だった。私は人にものをもらうことが苦痛になった。


 人にもらったということが、呪いになった。


 人付き合いはなんて嫌なことなんだろう。


 一人でいるほうがいいな。


 ただでさえ、他人は自分を悪く言う。


 友達にあげたものにケチをつけられたことがある。その相手にもちょっとどうなんだろうってものをもらうことが多かったのに。

 ただより高いものはない、という言葉を聞かされたのもその子の交友関係からだ。

 ものをもらったら返さなくてはいけない。それはこっちで買うことになるから、お金を使う。

 だから彼女は明らか使ったあとが見えるようなものを渡してきたのだろうか?

 なんで私は怒れなかったか…家族に怒る人がいて、それをなだめる側だったせいもあるかもしれない。


 自分の交友関係からして彼女を切ることはできず、相手の気持ちがある以上、それは喜ばなくてはいけないものだった。


 でも中学のときに思い切って切ればよかったかもしれない。部活を変えたらできたかもしれない。

 そうだ、彼女の親は運動する部活でないと許さないタイプだったのだから、いっそ美術部に入り直せばよかったのだ。そうすれば、向こうが他の部員に無視されたときにこっちにすり寄って来られることもなかった。

 縁を切れたのに。


 ただ、そこで部活を辞めなかったから、私は社会人になってからOB会に出れた。そこは良かったのかもしれない。辞めることで他の子に遺恨を残さなかったのだから。

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