第10話

 うちの家族はプライドが高いと言われた。

 母や兄嫁に。この家の血を引かないものに。


 でもいま思うと、プライドが高いというのは馬鹿にされることに耐えられない性格であり、それは生来のものというよりは、周りに馬鹿にされてきたからではないか?


 馬鹿にしてくるものと縁を切る、馬鹿にしないものといる、それができていればここまで私達はならなかったのではないかと思う。

 そしてそれができなかったのは、土地に縛られてきたからなのだ。


 地主小作人の関係を持ったままの幼馴染や、土地の割当で揉めたことをずっと根に持っている近所の商売人や、そんな昔の関係に縛られたままを良しとしている祖父母がいた。


 父は母に暴力を振るっていたが、祖母が止めに入った。

 周りから喧嘩してると言われるじゃないか、と。

 そして私が止めに入ると、父は母を離れに連れて行って殴った。

 そこなら音が聞こえないからだ。


 祖父母も父も周りの人にどう言われるかを何よりも気にして、それで家族がどう思うか、正しいかなどは気にしていなかった。


 友達ができたとき、それが母子家庭だからとか新興宗教の家だからという理由で平気でそんな子とは付き合うなと言われた。

 逆にグランドピアノが家にある子を、そんな大層な家に行くなといった。


 県営住宅から祖父母のところを立て直し、そこで同居したとき、私は、

 前のところに帰りたいと何度も言った。

 それくらい祖父に自分を否定されるのが嫌だった。

 でも自分はここで上手くやらなくてはいけない。

 次第に私は嫌いな人に媚びるようになった。


 友達がいないことを馬鹿にされるのが嫌で、なんとか誰かと繋がろうとした。


 ああ、私も周りに合わせて自分を偽って行くしかなくなったのだ。

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