第8話
兄はシングルマザーと結婚した。
実家が農家で米を買う必要がないことをアピールして結婚にこぎ着けたようだ。
父もシングルマザーと不倫していた。
相手は向こうの夫の不倫から離婚したばかりで、自分はお金がある、と言って交際を迫ったようだった。
問い詰められた父は、
「あの人はずっと前から好きだった。なのに他の男に横取りされた。今やっとこっちのものになったんだ」
とまるで美しい物語を語るように正当化した。
当時は祖父も元気だったし、父の稼ぎより家の農業のほうがよかった。実家の太さに頼っていたのだ。
父はろくに農業を手伝うわけでもなく、長男という特権で祖父の死後全てを引き継いだ。自分で手に入れたわけでもないものを振りかざして、子供や妻を支配した。
父が長男であったことでどれだけ被害者がいたことだろう。祖父は長兄にも優しかった。跡継ぎだからだ。祖父の優しさは自分に益のある者に注がれた。祖父が悪いのだ。そしてもっと言えば祖父を育てた長男重視の社会が悪いのだ。
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