第3話

 私の家は小作人だった。地主から預かった土地を耕すだけのちっぽけな家だったが、耐えて耐えて戦後の自農法で土地を多くもらえた。


 私が生まれてからでも祖父は地主の家の人間(町長になった)に媚を売るばかりだった。


 小学校には、変わった名字の子が何人かいた。


 その日私はランドセルを着換えをする棚、タンスの上に置いて、そのまま家を出た。

 ちょうど祖父が台所に居た。

 私を見た祖父は、どこか行くんかと聞いた


 私は友達の家に行くの、と名前を出した。

 すると祖父は怒り、あんなヤツと遊ぶな、あいつはこれやぞ、と親指だけたたみ、他の指をピンと伸ばした手を作り、私の目の前に押し付けた。


 いきなり怒り出すことはよくあったが、祖父のただならぬ態度にびっくりして、

 後ろに飛び退き、そのまま駆け出してしまった。


 なんとなく悔しく、恥ずかしく、誰に怒ればいいのか分からない気持ちが胸に詰まった。

 それは喉を通って鼻の奥へ、目から涙になってポロポロこぼれた。


 私はこれからどこへ行けばいいのだろう。


どこへも行けないまま、さまよい歩いた。

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