第17話

「……すごい。手際良い……」


「まぁ引きこもり生活がそこそこ長かったからね。これくらいの経験は詰んでいるだよ。僕をあまり舐めないでよね?」


「おぉ!!!」

 

 クラスの女子全員の注目を浴びながら僕は一人料理を作る。

 うちのクラスの学園祭への力の入れ具合は化け物レベルだ。めちゃくちゃ力を入れている。

 それはあの接客指導とかいう謎のスパルタ教育を見れば一目瞭然だろう。

 うちのクラスは接客だけでなく、料理にもこだわっている。

 少しでも美味しいレシピを求めて日夜活動をしていた。

 そんなことを知った僕は迂闊にも手伝うと言ってしまった。

 そのお願いは快く受け入れられ、その結果──────

 

 業務がストップした。

 

 僕の料理姿を見る。

 みんながそれに集中していた。誰ももはや料理になど興味を示していなかった。当然だ。

 目の前に男の子が料理姿を晒しているのだそれを見逃すような愚か者はここにはいなかった。

 いてほしかった。切実に。

 まぁ最終的にどうなったかと言うと、

 

「もう少し砂糖ほしいかも?」


「メープル入れてみるなんてどうかな?」

 

 クラスのみんなが僕の料理を口にし、それに対して評価し、どうすればより良くなるのかの討論をし、クラスのみんなの意見を元に僕が再度料理を行うという形に落ち着いた。僕への負担は考えられていない形だ。

 でも、僕は嬉しかった。

 否定されて。

 何をしても褒められるような世界だ。ここは。そんな中クラスのみんなは僕の料理へとダメ出しを行い、より良くするための案を出してきてくれている。

 これを成長と言わずしてなんて言うのだろうか?

 僕は内心でむせび泣いていた。

 こんな……こんな嬉しいことがあっていいのか……。


「うん。美味しい」


「完璧ね!低予算で喫茶店のようなふわふわパンケーキを再現出来たわ!」

 

 出来上がったパンケーキにみんなが絶賛する。


「どれどれ」

 

 僕もそれを一口いただく。……うん。美味しい。確かにこれなら完璧だ。パンケーキの甘さとフルーツの酸味がよくマッチしている。


「じゃあ次は何かな?」


「そうね。……じゃあ次はオムライスにしましょうか」


「オッケー」

 

 僕はオムライスを作るべく冷蔵庫へと向かう。


「あ、包丁とまな板と出しておいて。あとフライパンを洗うのもよろしく」


「「「はーい」」」

 

 僕がクラスのみんなに頼み事を行い、それにみんなが従ってくれる。……あぁ。僕の言葉を聞いてくれている。なんて嬉しいことなんだ……。涙を禁じえない。


「これと……これと」


 僕は感動を覚えながらオムライスを作るのに必要な食材をピックアップしていった。

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