第15話
「……え?」
僕は硬直する。
呆然と声を漏らす。
「え……?これ着るの?」
僕は僕の手に握られているメイド服を見て呆然と呟く。
僕の手に握られているメイド服……だがしかし、これをメイド服と呼んで良いのか。呼んで良いものか。
お金を掛けすぎたせいか無駄に豪勢になったメイド服。ひらひらの数がメイド服じゃない。一応白と黒を基調として作られているから、メイド服だと言われば納得してくれるレベルであるかもしれないが……いややっぱメイド服じゃなくね?
「なんかみんなと明らかに差があるんだけど……」
僕はみんなの方に視線を送る。
普通のメイド服に身を包んだみんなの方へと。
「当たり前じゃない。あなたに私たちと同じ服装なんか着させられるわけがないじゃない。馬鹿なの?」
僕の隣に立つ鈴鹿の言葉に全員がうんうんと頷く。……マ?
「え?僕だけこんなに目立つ服を着てやるの?」
「今更でしょ?男であるあなたが目立たないことはないわ」
……確かに。確かにね。もう他人から視線をぶつけられることにも慣れてきたよ。
うん。慣れたくはなかった。
「……ちょっと一回着替えてくるわ」
僕はとりあえず試しで着てみることにした。
■■■■■
「……え。ちょ、あの……」
僕は困惑する。
……どうしよう。全然着れない。マジで着れない。四苦八苦。ひらひらが多すぎてどうやって着ればいいのかわからない。何でこんなにごちゃごちゃしているんだ!意味がわからない!
僕は怒りを顕にする。
……え?マジでどうしようか……。
僕は絶望的なこの状況を前に立ち尽くす。
着方のわからないひらひらのメイド服。
誰かを呼んで助けてもらう……?いや、僕の更衣室となっているここに誰かを呼ぶのはまずいか。
……鈴鹿なら?鈴鹿なら案外冷静に対処してくれる……?いや、流石に無理か。というか鈴鹿事態が怖いし、あまりふたりきりになりたくないな。
僕が一度戻るしか無いのかぁ。
でも、僕が着替えた後の姿を楽しみにしてくれている中、着替えていない状態で戻るのは……。気が引ける。
でも、もうそれ以外に方法はない。もう諦める他ないだろう。別にクラスのみんなの期待を裏切っても大丈夫だろ!別に今は仕事中というわけではないのだし!
「よし!」
一旦教室の方へと戻って着方を教えてもらうことにしよう!うん!
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