第13話

「第五回。クラス集会を始めます」

 

 クラスの前に立つ一人の少女。クラス委員長。

 委員長ではあるが、霧音ではない。霧音は別のクラス。別のクラスの委員長だ。


「今日の議題は近々行われる学園祭についての話し合いを始めます」

 

 教卓の前に立つ委員長はなんか大きなノートに視線を落とす。


「えっと……前回は学園祭のクラブの出し物の内容を決めまし、た……」

 

 委員長が動きを止める。動きが鈍くなる。

 しばしの沈黙ののち、ようやく行動を開始する。

 

「……前回決まったのは……」

 

 再び沈黙する委員長。

 その次の言葉がなかなか出てこない。……一体どうしたのだろうか?多分原因は僕だろうけど。


「メイド喫茶、です」


 ……え?

 僕は動きを止める。それを聞いて。委員長のその一言を。


「え?女装すんの?僕」

 

 僕のごく自然と漏れ出た一言。

 それはこのクラスの……時を止めた。

 まじで。誰もピクリとも動かない。……ちょっと待って?みんな呼吸している?僕はそこが心配だよ?


「あぁ」

 

 そんな中。クラスメートの一人がガタリッと大きな音をたてながらゆっくりと立ち上がる。


「私は罪深い人間です……」


 その少女は神に懺悔するかのように膝を付き、涙を流し始める。


「私は……!私は……!私はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!」


 絶叫が。

 絶叫が響き渡る。


「美しく!神聖で!素晴らしい!男の子を女という薄汚い汚れた存在で汚す暴挙!それに対する背徳感!それに……!それに……!それに……!私は興奮を抱いています!隠し切ることなど出来ない飽くなき醜い欲を!!!妄想するだけ……!!!」

 

 ぐるん。


「あぁ!!!!!たまらないッ!!!!!」


 ……うん。

 僕は心のなかで頷く。

 これが狂信者が。これがス◯ルくんの気持ちか……。ペテ◯ギウス・ロマ◯コンィを前にしたスバルくんの気持ちか……。

 僕は絶対に背骨が折れているだろ……とツッコミたくなるほどに体をそらし、目を充血させて叫ぶ少女を見て僕は思う。ス◯ルくんすごいな……良く狂信者相手に戦おうと思うものだ。

 僕には無理だね。

 抵抗する心をポッキリと折られた僕は悟りを開きし菩薩がごとく心境で穏やかに頷く。これが現実だ……。


 狂信者のその言葉を聞いてその熱はドンドン波及していく。そして、僕へ向けられう視線もドンドン熱くなっていく。

 そんなに見つめないでほしいな。

 ……さてはて。

 僕に女装は似合うだろうか?

 女装なんてしたこ……痛っ。

 僕は突如頭に走った頭痛に眉をひそめた。

 最近頭痛多いんだよなぁ。

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