第12話

 そして!なんと!そんな生活を送ること更に一週間!

 毎朝毎朝おはよーを言い続け、毎日毎日放送して。

 ようやく!僕は教室で生活するまでになっていた。

 未だに放送は僕が全て担当しているし、朝の挨拶もしているけど。


「せ、正解よ……もう戻っていいわよ」


「はーい」 

 

 僕は黒板に文字を書いていたチョークを置き、自分の席に戻る。


「……頭いいのね」

 

 僕の隣に座っている鈴鹿がボソリと呟く。


「え?そう?」


「えぇ。ほら。周りの人を見なさい」


 僕は周りの人を見る。


「うん。いつも通り授業そっちのけで僕のことを見ているよ?」

 

 周りの人たちはみんな僕のことを見ていた。いつもどおりのことだ。

 周りのクラスメートも、そして先生までもが常に僕に視線を向けながら授業をうけいているんだ。

 そんな状態でもちゃんと授業は受けているのか、周りのクラスメートの視線は僕に固定されているけど、シャーペンが握られているその手は高速に動いている。

 うん。怖いね。


「いや、違うわ。向けられている視線の種類、感情の話よ」


「え?」

 

 僕は鈴鹿の言葉に顔を傾げる。


「いや、僕は一体どれだけの人から視線を向けられていると思っているの?視線に載せられた感情なんかいちいち気にしていたらそれだけで一日が終わるよ?」

 

 厄介なのだ。

 女性たちの視線は。視線だけで全て伝えてくる。どんなプレイをしたいかを。視線に意識を向けたら僕が精神的に死ぬ。僕を犬にしたいとか、掘りたいとか、罵ってほしいとか、セッ◯スセ◯クスとか。

 

「あ……そう」

 

 僕の言葉に鈴鹿がなんとも言えない反応を見せる。


「いや、あなたのマジな悩みは要らないわ。むしろそれでドンドン苦しんでほしいわ」

 

 ……ちょっとそのドS精神勘弁してほしい。


「周りの人たちはあなたに対して優しく教えてあげようとしていたのよ。引きこもっていたのならわからないだろうと。なのに平然とあなたが解くからみんな驚いて固まっているのよ」


「あぁ。そういうことね」

 

 僕は前世でちゃんと高校を卒業している。躓いたりはしない。


「まぁ引きこもりでも勉強は出来るからな」

 

 それにゲームのロード時間とかでちょくちょく勉強している。ちゃんと。別に僕は馬鹿じゃないのだ。


「なるほどねぇ」


 鈴鹿が僕の言葉に納得がいったように頷く。遠くの席に座っている理沙が首を傾げている。どうしたのだろうか?

 まぁ、いいか。


「ということだよ。僕に優しく教えようなんて百年早いんだよ。うん」

 

 僕はクラスメートたちに向けてそう告げた。

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