第9話
「は、はい!」
叫び続けている少女が鈴鹿に指さされ、勢いよく立ち上がる。
メガネを変えた三編みお下げのTHE・委員長!って感じの少女。
おそらく声の感じ、そしてあの発狂具合からド変態委員長だろう。
「私の名前は里原霧音です!【エスプリ】では……ド、ド変態委員長って名乗っています……」
ド変態委員長、霧音はド変態委員長と恥ずかしそうに名乗る。
……自分のことをド変態委員長っていうの恥ずかしいんだね……。僕は自分の前の名前を棚に上げてそんなことを思う。
「霧音ね……よろしく」
僕は霧音の方を向き、笑顔で告げる。すると、
「くぁwせdrftgyふじこlp」
霧音は頬を真っ赤に染め、意味わからない言葉を羅列し、ぶっ倒れてしまった。
……あ。……まぁいいか。
「じゃあ、次は私か」
霧音と一緒に入ってきた少女がぶっ倒れた霧音の代わりに立ち上がる。
後ろで長い黒髪を止めるポニーテールの少女で、ツリ目の綺麗な瞳は強い光を宿している。
「ぴえ」
それに対して、僕は悲鳴を上げた。
「……どうかしたか?私に何かついているだろうか?」
「……いや、睨まれて……ここに来るとき壁を登っていたら」
僕が膝を怪我した理由が目の前の少女だ。
途中とんでもねぇ殺気をぶつけられて驚き、思わず手を滑らせて落ちてしまったのだ。
その時に僕は膝を擦りむいてしまったのだ。
様々な道具で落ちる速度を落とし、頑張って受け身をとったのだが、流石に無理だった。
落ちた後、なんかあったときの確認のために持ってきておいた双眼鏡を使って殺気をぶつけた少女の姿をちゃんと確認しているので、間違いない。間違いなくこの子が僕に殺気をぶつけてきた相手だ。
ずっと僕の方を睨んでいたから、一旦学校の敷地を出てから再び極力気配を消して、壁登りなんてしないで普通に階段を使って来る羽目になったのだ。
いつ階段から女性が顔を出すか。恐怖で仕方がなかった。
「なっ……あのときの人の気配か!……す、すまない。私たちの部室に近づく学校で一度も感じたことのない怪しい気配を感じてつい殺気をぶつけてしまった。……そうか。あれは本当に男の気配だったのか……男の私物を盗んだ不届き者だと思っていたのだ」
……気配を感じた、か。
双眼鏡を使わないと見えないくらいには離れていたんだけど。
「本当に申し訳ない」
「いや、良いよ。別にもう気にしていないから。それで?自己紹介は?」
「あぁ。私は老田愛梨だ。【エスプリ】では侍ちゃんと名乗っている」
「そう。よろしくね?」
「あぁ」
愛梨は僕の言葉に力強く頷いた。
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