第5話

 教室。

 そこはまさに地獄絵図。

 凄まじい顔をした女子高校生たちが担任の先生を囲んでいた。

 まだ手は出していないようだが、いつグーがとんでもおかしくないような状況だった。

 まぁまぁ。

 これくらいだったらよくある話だ。

 別に僕を巡って殴り合いが起きるなんていう状況になっているのくらいよく見ることだ。もはやそれくらいじゃ流石に驚かない。まぁ、最初から修羅場っている状況に放り込まれたのは初めてだが。


「はえー」

 

 そんなことより驚きなのは叫び声だ。

 その叫び声。

 僕は非常に聞き覚えがあった。びっくりするくらいに。

 こ、こんな偶然ありえる?


「ま、マーリン、くんですか!?」


「う、嘘でしょ……」

 

「水面と、神無月……?」

 

 僕は二人の姿を見て驚愕する。

 まさかこんなことがあろうとは。ほ、本当に同じ学校だったんなんて……少し前の会話でフラグ立ったかな?とか冗談ながら思っていたけど……ガチでフラグが回収されるとは……。信じられねぇッピ。

 僕と水面と神無月は呆然と見つめ合う。

 水面はショートカットで小柄な地味めも美少女で、神無月は黒髪ロングの清楚!っと言った感じの美少女だ。


「「「……え?」」」

 

 僕と水面と神無月が見つめ合っていることを当然のように疑問に思った担任の先生と他のクラスメートたちが僕と二人とで視線を行き来させている。


「あ、自己紹介!」

 

 僕は大きな声で呟き、教卓の前にまで来る。

 担任の先生と、そしてそれを囲むクラスメートたちの前に。


「キャァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


「本物よ!!!」


「ぐへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ」

 

 僕が近づくことによって騒然となるクラス。

 膝を付き、僕に祈りを捧げている人もいる。うん。マーリン教の人なんだろう。

 

「うるせぇ」

 

 一言。

 僕の一言でみんながピタリと言葉を止める。

 こんな現場に慣れてしまッた僕にとってこれくらい楽勝だ。


「さっさと自分の席につけ。僕を待たせるな」

 

 僕は命令口調で淡々と告げていく。


「これ以上待たせるようなら二度と学校に来ないぞ?」


「「「……っ!?」」」

 

 僕のこの一言で全員の表情が変わる。

 彼女たちは一斉に動き出し、自分の席へと戻っていく。

 その動きは軍隊さながらだ。素晴らしいね。

 見ていて壮観だ。


「はい。どうも皆さんはじめまして。間宮賢人って言います。Vtuberマーリンとして活動しているので、知っている人も多いかな?これからよろしくおねがいします」

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