第29話
「お疲れ様」
夜。
家で和葉が僕に労いの言葉をかけてくれる。
「ん。ありがと」
夜ご飯も食べ終え、今は二人でソファに寝そべりながらダラダラと過ごしていた。和葉は僕に膝枕してくれている。
……ムード。
別にムードなんて要らないよね。この世界じゃ。
「ねぇ、和葉」
「ん?」
「僕達も婚約者となって長いよね?」
「そ、そうね」
「いつ結婚してくれるの?」
「へ?」
僕の一言に和葉が固まる。
「僕さ。今日。アクセサリーショップのCMを撮ってきたんだよね」
「ほ?へ?こ?」
バグり散らかしている和葉を置いて、僕は言葉を続ける。
ポッケ。
普通にポッケに入れていた小さな箱を取り出す。
そこに入っているのは二つの指輪。
僕はそれを和葉に見せる。
「僕と結婚してくれない?」
僕はいつもと変わらぬ調子で告げる。
それに対し、和葉は。
「はわわわわわわわわわわわわわわ!」
信じられないくらいに慌てていた。
「指輪!?結婚!?ゆ、指輪なら私が……!」
僕は和葉の言葉に少しムッとする。
「だって和葉が僕に結婚してくださいって言って指輪くれないじゃん」
「いや!え……だって、それは……」
「ん?お?何さ」
「……まだ……信じられなくて……私がけ、結婚だなんて……。そんな結婚しようなんて言って……『は?何言ってんの?調子のんなよこのドブス』なんて言われたら……」
「……」
僕は沈黙する。
そんな……!そんな理由!?これでも僕結構やきもきしたんだけど!?
前世の記憶がある僕としては僕から指輪を渡したいな、って思っているけど、この世界の常識的に考えて待つべきかな?とか結構悩んだんだけど!?
「むすー!!!」
僕は和葉に見えるように頬を膨らませる。
全力で不服だということを表現する。
「はい!手を出して!」
「え?」
「いいから!」
「え、あ、うん……」
和葉が僕の気迫に押されておずおずと手を差し出してくる。
「はい」
僕は細くて白くて綺麗な和葉の薬指に指輪を嵌める。
「はい」
そして、和葉にも指輪を一つ渡す。
「僕にもつけて」
僕は左手を差し出す。
「え、あ……うん」
和葉はためらいがちに僕の手を取り、薬指に指輪を嵌める。
僕と和葉。
二人の手にきらりと指輪が光る。
「はい!お揃い!」
僕は和葉と手を合わせる。
「……結婚、してくれるよね?」
僕は上目遣いで和葉に聞く。
未だに焦り、戸惑っている和葉に。
「も、も、も、もちろんだよ!!!断るなんてありえないよ!」
「えへへ。それは良かった」
僕は和葉のその言葉に頷く。
「これで僕たちは夫婦、だね!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます