第27話
ボロボロになって使い物にならなくなった車を乗り換え、別の車で目的地まで向かう。
あの襲撃事件の後は特に何事もなく、無事目的地に来ることが出来た。
「遅れてすみませーん!ちょっと色々あって!」
僕は声を張り上げる。
「いいえ!大丈夫です!事情は聞いていますから!大変だったでしょう?ゆっくりしていってください」
「いえ、大丈夫です。すでに車でゆっくりしてきたので。そんなことより早く始めてしまいましょう。僕が遅れてきたせいですでにスケジュールに遅れが出来ているので。それに、ここで長時間の撮影はしたくないですから」
僕はガラス張りで、外から丸見えの店内を見渡す。
外にはすでにたくさんの女性たちの姿が見える。
ここは東京の繁華街に構えるアクセサリーショップ。CM撮影はここで行われる。
『僕』がいたお店。
そのブランドは計り知れない。
CMをとるのならスタジオなんかで撮るよりも断然お店で撮ったほうがいいのだ。その方が集客効果が高い。
「そうですね!では早速始めてしまいましょう。撮影準備!」
おそらく今回の撮影のリーダーと思われる中年の女性が周りの人たちに声をかける。
周りのスタッフたちは続々と動き出し、撮影の準備を始めていく。
「賢人様はこちらへ」
「ありがとうございます」
スタッフの一人が、奥へと案内してくれる。
「こちらです」
スタッフさんが僕を一つの部屋にまで連れてきてくれて、その後すぐに去っていく。隣にずっと女性がいるのは嫌だろうという僕への配慮ですぐに去っていてくれたのだろう。
コンコン
僕は部屋の扉をノックし、すぐに扉を上げる。
ノックの返事は待たない。どうせ中にいるのが誰かはわかっているのだ。
フラグではない。
「あらいらっしゃい。今日もいい男わね」
聞こえてくるのはいつもどおりの声。
「よろしくおねがいしますね」
僕は頭を深々と下げる。
部屋の中にいるのは確定オカマさん。
この人は僕の専属メイクさんとして働いていてくれている。
ありがたい限りだ。
「大丈夫?襲われたらしいけど、怪我なんかしてないかしら?」
「はい。大丈夫です」
「それなら良かったわ!さっ。座って!」
確定オカマさんが椅子を示す。
「はい」
僕は確定オカマさんに従い、椅子に腰を下ろした。
「じゃあ今日も今日とて可愛くばっちりメイクをしていっちゃうわよ!」
「よろしくおねがいします」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます