第16話
「ふぅー」
僕は最初に案内された控室に戻り、ゆっくりと息を吐く。
初めてのリアイベ。
それは一応僕に危害を加える範囲でのハプニングはなかった。観客席は真っ暗だったから、観客席がどうなっていたのかを僕は知らないんだけど。
「疲れたぁー」
「お疲れ様ね。かっこよかったわよん」
確定オカマさんが僕に未開封のペットボトルを渡してくれる。
「ありがと」
僕はそのペットボトルを開け、喉を潤す。
「メイク落としは家にないのよね?」
「あ、はい」
「じゃあはい」
確定オカマさんが僕にメイク落としを渡してくれる。
「じゃあそれ上げるから家でちゃんときれいに落としてね?」
「あ、はい」
僕は確定オカマさんの言葉に頷く。
「……その前に帰れるのかどうかが不安だけどね……」
そして、僕は苦笑しながら話す。
外から聞こえてくるのはたくさんの女性の声。その声に僕は聞き覚えがあった。ライバーさんたちだ。
「はぁー」
確定オカマさんがそんな僕を見て深々とため息をつく。
……え?僕なにかした?
「ちょっと待ってらっしゃい。ちょっとバカどもに話をつけてくるわ」
確定オカマさんが立ち上がり、扉を開けて外に出る。
「っるぜぇぞ!ゴラァ!!!!」
ビクッ
扉の外からものすごく……ものすごくドスの利いた声が聞こえてくる。
「怖がらせてどうするだァ!?アァン!?」
……え、怖い。
今は誰よりも確定オカマさんが怖い。……あの人は怒らせないようにしよう。うん。
僕は自分の前に置かれているお菓子へと手を伸ばす。
まぁ今の確定オカマさんの怒りの矛先はライバーたち。僕じゃない。
いやー。頼もしいね。
「これで怖がって加入辞めるってなったらどうすんだァ!?てめぇらが後始末とれるんか?アァ?」
確定オカマさんの頼もしい一喝をBGMに僕は優雅にお菓子を食べ、飲み物を口にする。
それからしばらく。
ようやく扉の外の騒々しさが弱くなってくる。
全く。外で騒音を撒き散らしていたら炎上しちゃうよ?
「安心しなさいな。元々マーリンくんはライバー全員とコラボするように予定が組まれているわ。だからさっさと散りなさい。残っていたらコラボさせないわよ?」
外から慌てたような声が聞こえてきてバタバタと人がいなくなる気配を感じる。
「はい。散らしたわよ?いつでも帰れるわ」
扉を開け、確定オカマさんが部屋に入ってくる。
「ありがと」
うんうん。これで解決だ。
……。
…………。
え?ちょっと待って?
僕。
ホロさんじのライバーたち全員とコラボするなんて聞いていないんだけど?
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