第15話


 爆発。

 

 とんでもない爆弾が爆発したかのような衝撃が走る。

 空気を震わす。

 空間を震わす。

 それは怒号か。悲鳴か。咆哮か。


「今日はみんなのハートを撃ち抜いちゃうぞ🎶」

 

 自分でドン引きするような気持ち悪い声を出す。

 そして、手で銃を作り、撃ち抜くような動作を行う。

 

 沈黙

 

 僕のたった一撃でこの場が一気に静まり返った。

 どうやら威力は絶大だったようだ。

 ……この場に最早嗅ぎ慣れてしまった。本当なら確実に嗅ぎ慣れることはないであろう匂いがこの場に充満しだす。

 

 パッ

 

 照明がつく。

 ただし、照明がついたのはステージ上だけ。観客席は真っ暗なままだ。

 これは僕への配慮だ。

 観客席が見えていたらやりにくいだろうという社長さんたち運営の。

 すごくありがたい。


「ノシ」

 

 僕は満足げに頷き、社長さんのもとに向かう。


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええ!」


「ひゅ?けっ?ほへ?」


「ぎゅーーーーーーーーーーーーーーす!!!」

 

 ステージ上にいたライバーさんたちはみんな尋常じゃないくらいに慌て始める。

 まぁ彼女たちには僕が加入することを伝えていないから驚くのも当然だけど。


「いやー、僕の加入にみんなが驚いてくれて良かったよー。うん」


 僕は驚いて未だにパニックっているライバーさんたちを眺める。

 

「……ちょっと驚きすぎかもね。これは」


「まぁ仕方ないでしょう。今のあなたは世界で一番有名と言っても良いのですから」


「僕はそんなに有名になると思っていなかったんだけどなぁー。男というブランドを過小評価していたよ……」


「自分の価値というのはわかりにくいものですからね。はい!そこのライバーさんたち。そろそろ正気に戻ってきてー。この後マーリンくんも混ぜて歌を歌を歌いたいんだから。あなたたちが正気を失っているままだと出来ないわよ!もう時間もないのだから!」


「はっ!?」


「それは嫌!?」


「そんな!?」


「ほら!歌うわよ!」


「……私達いる?」


「要らないわね」


「マーリンくんの独唱を聞きたい」


「聞き入っていたい」


「うるさい!」

 

 ワイワイと話していたライバーたちを社長さんは一喝する。


「いきなりこんな大舞台で一人で歌わせられないわ!一人は嫌だ!って言われているのよ!一人なら歌わないって言われているの!四の五の言わずに歌いなさい!女なら男の子を完璧に支えてみなさい!」


「はい!」


「うす!」


「もちろんでっさ!」


 ライバーさんたちは手のひらをひっくり返し、頷く。


「じゃあもう音楽スタートするわよ!時間がないわ!」


 スピーカーから音楽が流れてくる。

 

「あー」

 

 僕は他のたくさんのライバーたちと一緒に歌を歌う。

 ちなみに結構恥ずかしかった。

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