第14話

 僕のMVが流れ出す。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!」


「フニャァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


「フンゴォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 

 絶叫。それに合わせて女性たちの絶叫が、空間を揺らす。

 僕の鼓膜を破らんばかりだ。


「なんと!あの!世界初!男性Vtuberのマーリンくんが!ホロさんじに加入することになりましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!!」

 

 そんな絶叫にも負けないほど大きな声で社長さんが告げる。


「そして!今!来てます!」

 

「すぅーはぁー」

 

 深呼吸を一つ。

 僕の番だ。

 ついに僕の番が来た。


「初めての顔出し!刮目しろ!女郎ども!カモン!」

 

 ……社長さんがファンのことを女郎なんて呼んで良いのか?


「ギィヤァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


「グォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


「ボェェェェェェェェェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」

 

 さらなる歓声が響き渡る。

 いや、最早歓声なんてレベルじゃない。

 咆哮だ。

 人間の、化け物の咆哮。


 プシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

 

 真っ白な煙が上がり、ライトがいったんぶつんと消える。

 ライトが消えた。

 それがタイミング。僕の出番。

 僕は階段を登り、ステージ上に上がった。

 

 パッ

 

 色鮮やかなライトが付き、僕を、僕だけを照らしあげる。


「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!?!?!?!?」

 

 人々声にならない歓声、叫び声、咆哮が響く。支配する。

 電気が消されていることで観客席にいる彼女たちの顔が、姿が見えないことが唯一の救いだ。

 

「すぅー」

 

 僕は一度。

 大きく息を吸う。

 ここまで来た。

 もう逃げられない。

 もう引き返せない。

 もう後やるだけだ。

 

「どうもー皆さんこんにちは!世界初!そして世界唯一の男性Vtuberのマーリンだよー!!!今日はバーチャルな姿を捨て、リアルでこんにちは!」

 

 僕は観客席にいる彼女たちに負けないくらいの大きさの声で話す。

 僕の声はマイクを通して

 せっかくやるんだ。

 すべての人を魅了できるような。

 

 この世界の歴史に残るような伝説を作ってやろうじゃないか。

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