第13話
舞台裏。
舞台裏で僕は自分の番を待つ。そんな僕のそばには確定オカマさんと、護衛の人たちがいる。
舞台裏に置かれているモニターでイベントの様子を見ている。
「ふー」
僕はゆっくりと息を吐く。
緊張してきたぁー。
「大丈夫よん」
僕の隣に立っている確定オカマさんが僕に声をかけてくる。
「そんなに緊張する必要はないわ」
「そう、かな?」
「えぇ。そうよ。どうせあなたがどんな失敗をしたとしても他の人は一切あなたの失態を気にしたりなんかしないわ。ほとんどの人はあんたの容姿に釘付け。プラスまともな思考回路を捨て、脳死になっているような子がほとんどよ。あなたの失態なんか記憶の欠片にも残らないだろうから安心しなさいな」
「……そうだよね、うん」
確定オカマさんの言うとおりだ。
……うん。まったくもってそのとおりだ。
多分……。逆に僕の行動すべてを記憶しているんじゃないか?それくらいは余裕でしてくるんじゃないか?
ぶるっ
僕は体を震わせる。
「ほら!大丈夫だから!」
バシンッと確定オカマさんが僕の背中を叩く。
「あなたみたいないい男ならすべての人間を掌握できるわよ。婚活パーティーでの演説すごかったじゃない!私感動したのよ?」
……婚活パーティーの演説があったからこそ僕は今こうしてここに立っているんだけどね!
「すぅーはぁー」
僕はゆっくりと深呼吸する。
「まぁもうやるしかないよね。多分だけど僕が何をしても他の女性たちは受け入れてくれるだろうし」
「えぇそうよ!当たり前じゃない!そうよね?」
ちらりと確定オカマさんが護衛たちに視線を向ける。
うんうん。と護衛さんたちも頷く。
「……ちゃんと守ってよね?僕ここで死にたくないから」
「任せなさい!ちゃんと設備もあるし、護衛だってプロよ!」
「……うん。それならいい」
僕は黙り、モニターを見つめる。
もうイベントも終盤。
そろそろ僕の出番。
今は社長さんがステージ上に上がり、お話をしている。
普段はステージ上に上がってこない社長さんがステージ上に上がっているということもあり、観客もステージ上にいるVtuberたちも動揺している。
「なんと!今日はですね!とんでもないビックニュースを持ってきています!」
社長さんがマイクを手に持ち、ノリノリで話している。
「では早速MVどうぞ!」
社長さんの一言。
それを合図にモニターが光り、流れ始める。
僕がいつもエンディングに使用している曲が。
僕の番だ。
僕は覚悟を決めて最初の一歩目を踏み出した。
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