第7話
僕は僕を拉致した女性たちに囲まれて進む。
彼女たちは僕の護衛としてついてきているだ。
……一度僕を拉致した人が僕の護衛だとか笑い話にもならないよね。
「ここです」
僕が案内された場所は一つの部屋の前。
コンコン
一緒に車乗っていたスーツの人が扉をノックする。
「どうぞ」
一人の女性の声が扉の中から返ってくる。
「失礼します」
一緒に車に乗っていたスーツの人は部屋の扉を開ける。
中はかなり広い空間だった。
中央に置かれた高そうなきれいで大きな一つの机。机の片面に椅子が4つ。そして、一番奥、机の中央にも椅子が一つ。
テーブルの上には小さな花瓶が置かれている。
奥に見える棚にはガラスケースに入れられた賞状などや、今までの首相の写真や絵など。様々なものがあった。
「……なるほど。これは凄まじいものがあるわね」
一番奥、机の中央に置かれた椅子に腰掛けたいた女性が立ち上がって一言。
「どうも初めまして」
その女性は僕の方に歩いてきて手を差し出してくる。
奇抜なファッションでちょっとだけ派手めなスーツを着こなした中年の女性。
動き一つ一つに気品があり、どこかオーラ的なものを知覚する。
……こやつッ!……出来るッ……!
僕は内心馬鹿みたいなことを考えながらその手を取る。
「は、初めまして」
僕は声が震えないように努力しながら言葉を返す。
「そんなに緊張する必要もないですよ」
目の前の女性はそう告げ、惚れ惚れするような笑顔を見せる。
……緊張するに決まっているさ!緊張しないなんて無理だろ!?
僕は目の前の女性を知っている。
よくテレビで見る。
この女性は──────
「自己紹介の方をさせていただきますね。私は岸田文枝。自由民主党所属の衆議院議員で、こんな身なれど内閣総理大臣、自由民主党総裁の座に座らせて貰っている人間です」
政治のトップ、総理大臣その人なのだろうから。
戦後一番有能な総理大臣と呼ばれるこの人の評価は高い。男性の自殺問題で急激に支持率を落としているけど。
……緊張するなって方が無理じゃない?
「座りましょうか」
総理大臣、岸田さんが元の席に座る。
「どうぞ。お座りください」
岸田さんは自分の隣の席を手のひらで示す。
指刺さないのか……上品だ……。お、オーラが違うッピ。
「し、失礼します」
僕はゆっくりと椅子に腰を下ろす。
「近くにこんな綺麗な男性がいるとなると、緊張してしまいますね。上手く話せないかもしれませんが許してくださいね?」
こっちのセリフなんですがそれはぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!?
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