第3話
「今日も僕の配信を見てくれてありがとね!また明日も同じ時間に配信するのでよかったら見てねー」
僕はなんか大きくて高性能そうなマイクに向かって言葉を告げる。このマイク高かったし、良いものだろう。
売っているもので一番高いのにしたし。
やっぱこう。良いものを揃えるとやるぞ!っていう気分になるよね。
僕の配信画面に映るコメント欄は高速に動きすぎてて何が書かれているかわからない。
まぁどうせコメント欄に表示される言語は外国語だ。
英語、フランス語、ドイツ語など。欧州の言語であれば理解できるのだが、中東の方の言語や、中国語などになってくると全然わからない。何を言っているのでしょう?状態になってしまう。
どうせ書かれいる言葉は『大好き』とかなのだ。読む必要もない。
「じゃあまたねー!おつー」
僕は配信を終了する。
そして、横に立っている和葉に視線を向ける。
「はい。大丈夫よ。ちゃんと配信を切れていますよ」
「ふー」
僕は和葉の言葉を聞いて力を抜く。
また配信事故することがないように和葉に横で見ていて貰っているのだ。
……今まで何も考えていなかったけど……僕のオナニーの声、和葉にも聞こえているんだよね……。
まぁ一緒の家に住んでいるのだから、化け物でしか無い和葉にはバレているとは思うが……。
なんかいまさらめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。
「……賢人?」
「なんでもない!」
僕は少し大きな声を出して立ち上がる。
「喉乾いたから飲み物持ってくる」
「あ、じゃあ私が持ってくるのでそこで待ってて」
サクッと和葉がこの場から消える。
なんで消えるの?とは最早突っ込まない。
理由は『和葉だから』その一言で説明がついてしまう。
「ふぅー」
僕は再度一息つく。
僕がこうしてVtuberを初めてもう一ヶ月が経った。
この一ヶ月。僕がしていたことはただただ普通にゲームの配信をしていただけ。
男性の自殺について僕は何も触れていないし、婚活パーティーのことも話題には上げない。
まだその話題を僕が話すのは早いし、どこまで踏み込んで良いものなのか。測りかねている部分がある。
僕がVtuberとしてデビューし、女性に愛想を振りまいていることに失望した。と言っている男もいるのだから。
「はい。どうぞ」
いつの間にか立っていた和葉が机の上にレモンティーが入ったグラスを置いてくれる。
「ん。ありがと」
僕はそのグラスを手に取り、レモンティーを喉に流し込む。
「あー。美味しい」
コツン
僕は机の上にグラスを置いた。
カランという音はもうしない。
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