第2話

「……これで、いいの?」

 

 僕は隣に立つ和葉の方を見る。


「えぇ。大丈夫ね」


「おけおけ!ありがと!」

 

 和葉にお礼を告げる。

 賢い僕は学んだのだ。

 機械音痴である僕が一生懸命やるより、和葉に頼んだほうが速いと。

 僕は和葉にすべての設定をしてもらったのだ。

 和葉の手際はめちゃくちゃ良くて、すごかった。


「よし!やっていこうか!」

 

 僕が元気よく告げる。

 苦節……えっと30日くらいかな?

 ようやく僕のVtuberとしての圧倒的な活躍がッ!

 

「あ、あの……」

 

「んにゃ?」


「本当にいいの?国に頼まれたからって言って無理に頑張っていない?別に国の依頼だから断っちゃいけないってわけじゃないよ?……無理強いしてくるようなら私が国を潰すし……」


 国を潰す!?何言っているの!?

 僕は驚愕する。

 そして和葉は本気でやってしまいそうである。出来てしまいそうである。

 地面殴って地震消し飛ばしたし。

 うん。しゅごい(白目)

 

「大丈夫だから!」

 

 僕は和葉を安心させるようにうなづく。

 国を潰されたら困る。僕の生活費は国から支給されているのだから。

 

「本当に?怖くないの?……その、女性たちが……」


「当たり前だよ!」


「本当?ほんとの本当?


「あぁ。僕は婚活パーティーで女性たちと戦い、そして素晴らしい演説をぶちかました男だよ?リアルで会っているわけでもあるまいし。所詮はネットだけ。それのどこに恐れる必要がある?」


「それに忘れてたの?」


「ん?」


「初対面で下からドバドバ流しながら僕に向かって突っ込んできた女性を相手に戦い、勝利した男だよ?そして、そんな女性を好きになり、婚約した男だよ?僕をそこらへんの男と一緒にしないでほしいね」

 

 うんうん。

 僕は前世があるからね。

 基本的にみんな美人だからね。女性には寛容なんだよ。僕は。獣のように追いかけてくるのは辞めてほしいけど。

 婚活パーティー。あのときの女性たちはなんというか……うん。ゾンビだよね。

 ゾンビパニックだよね。あれを女性だとは認めたくない。


「あぅぅぅぅぅ。ごめん……」


「いいのいいの!気にしていないから」


「うぅぅぅぅぅ。……ん?」


 和葉が首を傾げる。

 どうしたんだ?


「下からドバドバ……」

 

 和葉が視線を下げる。


「はぅわ!?」

 

 漏れまくっている自分の下半身を見て顔を真っ赤にし、蹲る。

 ……やっぱり無意識なんだね。それ。


「じゃあ始めるね?」

 

 一応。ちゃんと和葉に報告を入れておく。

 僕は配信開始のボタンを押す。余計なことはしない。


「はい!どうも皆さんこんにちわ!マーリンくんだよ!」

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