第28話
「動くな!動いたら一体どうなるかわからないぞ!」
「やめて!落ち着いて!」
ナイフがキラリと光り、女性たちが叫ぶ。
「あー」
そんな光景を僕は一人、後ろから眺めていた。
なんでこんなことになった?
女性たちの前でナイフを握り、人質を手にした犯人のようなことを叫ぶ男たち。
人質は自分だけど。
そして、女性たちは理性を取り戻し、男たちをなだめようとしている。
理性を取り戻した女性。普通に戻った女性。
汚物とか言いようのない布を持っていて、知的に話す全裸の女性。
なんというかさっきよりもひどい。
さっきまでは理性を失い獣のようだったため、『あぁ、こいつは僕の常識に収まらない存在なんだな』と考えを放棄出来たのだが……。
目の前にいるのは前世の女性たちくらい平然と話している女性たちなのだ。
……この人達、人間だったんだね。
「下がれ!下がれ!下がれ!」
「わかったわ!わかったからそのナイフを下ろして!」
ジリジリとゆっくり女性たちが下がっていく。
男たちは自分の首元にナイフを突きつけている。
……まさかこんなにも効果があるとは……。
みんな何の疑問も、抵抗もなく自分にナイフを突きつけるとは……。
ちょっとだけ引くぞ……。
もう少し悩もうよ。
「ほら、下がってるから下ろして、ね?」
「ダメだッ!もっとだッ!俺らの視界に入らないところまでッ!一階の玄関まで下がれッ!」
「わかったわ!わかったからお願いだから私達がいなくなった後自殺しないでね?」
「あぁ!わかってるッ!俺らも死にたいわけじゃないッ!」
「それならいいの……」
女性たちはゆっくりと下がり、そのまま見えなくなった。
デブの言葉に従い、本当に玄関にまで戻っている。
「「「……」」」
沈黙。
緊迫した空気の中、沈黙が続く。
そして───────
52、53、54、55、56、57、58、59、60
時は満ちる。
『終了時刻と成りました。婚活パーティーをこれにて終了します』
スピーカーから少しだけ驚きを含んだ声が聞こえてくる。
『みなさん。お疲れさまでした』
「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!」」」
沈黙は破られる。
大喝采。
男たち全員が叫ぶ。歓喜の声を。
学校全体を震わすかのような声で。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん〜〜〜」
なんか感極まって泣いている人もいる。
なんというか、みんな死を恐れていなくて怖いと言うか……。
まぁでも、無事に僕は、僕たちは婚活パーティーを攻略したのだった。
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