第29話
「はぁー」
慣れ親しんだ自室。
ずっと愛用しているベッドに飛び込み、僕はゆっくりと息を吐いた。
「疲れた」
本当に大変だった。
こんなに大変だった5時間は今まだにないだろう。
……。
…………。
「よっと」
僕は僕の自室に置いてあるリビングのテレビより少し小さいが、それでも十分、前世なら高くて買えないような大きさと性能をしているテレビの電源をつける。
『本日未明。自殺により男性一人が死亡。婚活パーティーの日からの自殺件数はこれで4件目です』
僕の演説。
僕はあの演説を動画投稿サイトでライブしていたのだ。
僕のチャンネル登録者数は日本の総人口を遥かに超えるどころか、ほぼ全人類だと言っても良い。
そこでライブすれば全員が見てくれる。それにより婚活パーティーに参加していた女性たちも動きを止めてくれるかもしれない。という判断の元行われた行動だったのだが、その行動は僕の予想を越えて大事となってしまった。
僕の演説。
それによって心を動かされたのはあの場にいた男たちだけでなく、当時その動画を見ていた男性全員だったのだ。
僕の行動によって男性たちがどんどん自殺を初めちゃったのだ。
『自分は人間だ!』と言って。
男性の権利を認めているアメリカや大日本帝国などの先進国だったのならばまぁそんなにでもなかったが、本格的にやばいのは発展途上国だった。
男の権利を認めず、奴隷としていた他の国々に住んでいた男性たちは次々と自殺していった。
ナイフで、銃で、ガラスの破片で。
ナイフを、銃を、ガラスの破片を。自殺に使用する武器を奪われたのならば自らの舌を噛みちぎって。
自殺していった。
『俺達は人間だーッ!』そう叫んで集団で投身自殺している人達もでてきたのだ。
まぁつまり。
僕のせいで世界は大変なことになってしまったのだ。
「まぁ別に僕は関係ないけど」
彼らが自殺してしまった原因が僕にあるということは心を痛めることだが、自殺を選んだのは当人だ。
それに自殺するまで追い込んだのは女性たちだ。
そこまで僕が心を痛める必要はないだろう。
「賢人ー!ご飯出来たよー!」
「はーい」
僕は元気に返事をし、和葉のもとに向かった。
■■■■■
夜ご飯。
僕と和葉が夜ご飯を食べている時、リビングのテレビが男性が自殺下というニュースを流していた。
「えっと……その……」
そのテレビを見て、和葉は不安げに言葉を告げる。
「嫌、じゃない?私と一緒にいて……」
不安になったのだろう。僕が自殺するんじゃないかと。
「よっと」
僕は和葉の方に身を乗り出す。
そして──────
和葉の唇と自身の唇を重ね合わせる。
「へ?」
「僕は和葉のこと大好きだから。安心して?」
「はぅわ!?」
和葉がまるでりんごみたいに頬を赤く染める。
ふふふ、可愛い。
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