第26話
これ以上ないくらい絶望の表情を浮かべた彼らが僕の方に視線を向ける。
僕のこれまでの功績を期待してだろうか。絶望の表情を浮かべた彼ら。だけれども僕を見つめる瞳にはかすかな希望の光がある。
「僕たちは負けた」
そんな希望を叩き壊すように僕は静かに告げる。
僕の一言にその場にいた全員が表情を歪める。
その瞳から希望が潰える。
あぁ。そうだ。絶望しろ。
「直に女性たちがここに押し寄せ、ここにいる全員が何も出来ずに貪られ、一生性奴隷として女性たちに飼われることになるだろう」
僕は静かに話を続ける。
さぁ。見ているか?
僕は扉を壊そうと叩く鈍い音が途絶えているのをはっきりと認識していた。
「重要なことだからもう一度言おう。僕らは負けた!」
はっきりと断言する。強い言葉で。彼らを絶望の底に叩き落とす。
「何故だ?」
僕は彼らを見定め、静かに問いかける。
「僕らは知恵を張り巡らせた」
「僕らは皆で協力した」
「僕らはありとあらゆる手を取り尽くした」
「僕らは勝利を確信していた」
ここで一度言葉を止める。僕以外の全員が勝利を確信していたと言っていいだろう。男たちにとって初めてだったのだろう。女性たちと戦った事自体。
「だが負けた。理由は簡単だ」
「彼女たちの牙が知恵を喰らった」
「彼女たちの個の圧倒的な力は皆で協力することを無駄とした」
「彼女たちの笑顔は意味もなく抗う僕らを馬鹿にした」
「彼女たちが負けることなどなかったのだ」
「彼女らは僕らとは違う。数も。力も。僕らは弱い。それ故に弱者なりに知恵を張り巡らせて戦った!だが負けた!弱者の知恵は強者に届かなかった!数の力は個の力に敵わなかった!そもそも数の力も何も僕らの方が少ないではないか!何もかもが足りないッ!」
僕は早口に告げる。
彼らに現状を嫌というほど叩き込む。
「僕らには何があるッ!」
ゆっくりと手を広げる。
「何もない」
パンッ。
両手を合わせる。
「力も数もなにもない。何の武器もなく。僕らは、我ら男は未来永劫女性たちの性奴隷として生まれ、死ぬ。それしかない」
静かに告げる僕の言葉に目の前の男たちは涙を流す。
「とでも思ったら大間違いだッ!」
僕は叫ぶ。
「僕らにはッ!武器があるッ!彼女たちには無いッ!唯一無二の力がッ!」
「何処にダァ!」
僕の言葉を否定するように涙を流したデブが叫ぶ。
僕よりも強い言葉で。
「俺らは負けたッ!どうしようもないまでにッ!俺らはここで死ぬのだッ!俺らは……!俺らは……!一体どこに武器があるってんダァ!!!」
僕は笑みを浮かべる。
泣き叫ぶデブを安心させるように。
「簡単だよ」
僕は思いっきり自分の手のひらにナイフを突き刺した。
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