第23話

 放たれる数多の弾丸。

 それらは女性たちに一気に襲い掛かる。

 普通の鉄の弾丸。

 正真正銘鉄の弾丸。

 第一次世界大戦、第二次世界大戦。数多の戦争。数多の紛争。

 これまでの幾度も人の命を奪ってきた弾丸は。

 

 人の命を奪えない。


 彼女たちに弾丸は通らない。


「バカな!?」

 

 銃弾を食らってもちょっと出血しただけで済んでいる女性たちを見てデブが驚愕の声を上げる。

 何故か銃弾は人を貫けない。

 ……予想はしていたけど実際に見ると信じらないな。


「落ち着け!」

 

 僕は一人声を張り上げる。

 

「麻酔弾はちゃんと効果を及ぼしている!」


 僕が用意しておいた大量の麻酔薬はちゃんと女性たちに効果を及ぼしていた。

 象をも一瞬で眠らせる最強の麻酔薬はちゃんと女性たちに効果を及ぼしていた。

 何故か火も銃弾も弾く謎の力であっても内部への攻撃には弱いようだ。

 僕が狙い撃ちした女性は麻酔薬で眠り、他の女性たちを巻き込んで転がっていた。


「なるほど!」 

 

 他の男たちも僕と同じように麻酔弾を使って攻撃を始める。

 彼らにもちゃんと麻酔弾は配ってある。

 普通に銃弾で殺せる。そんな一般常識に囚われてしまった彼らは銃弾で戦ったが、そんなのは理想でしか無いと知ったわけだ。

 みんなは麻酔弾を武器として利用する。

 ……なんで死なないんだよ。意味わからないわ。

 なんで大戦でこいつら死ぬんだよ。女性たちが肉弾戦を仕掛けるのが最強じゃないか。

 意味がわからない。

 意味がわからなすぎる。女性たちにとって男とは何なんだ?

 

「撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て撃て!!!」

 

 デブが叫びながら銃を乱射し始める。

 あいつの戦意すげぇな。

 

「ちっ」

 

 僕は舌打ちを一つ。

 サクッと何事もないように起き上がってきた彼女たちを見て。

 象をも一週間眠らせることが出来る麻酔薬のはずなのだが、女性たちをなんと一分も眠らせることが出来ない。

 意味がわからなすぎる。

 ほんとなんでこの人達は戦争で死ぬんだ?意味がわからない。

 戦争に男を連れていけば戦争で圧倒出来るだろ。


「撃て!諦めるなァ!」

 

 僕は声を張り上げる。

 麻酔薬をしこたま撃ち込んでいるのにも関わらず平然と起き上がっている彼女たちに恐怖感を抱いている男性たちの心を折れさせないように僕は声を上げ続けた。


「くそっ」


 小さな声で呟く。

 もう……。もう麻薬弾もさほど残っていない。

 

「……はぁー」

 

 僕はため息をつく。

 ……あぁ。

 もう無理だなぁ。

 30分も経っていない。だが、これまでだ。

 僕はある仕掛けを作動するために手を伸ばした。

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