第18話

「走れ走れ走れぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええ!!!」

 

 僕は後ろを着いてくる男たちを鼓舞するように叫びながら走る。

 廊下には少しでも女たちの足止めになることを祈ってのバケツの中に入ったスライムを撒き散らす。


「よし!登れ!」

 

 そして僕達は無事に三階の階段にたどり着く。

 この学校。校舎はバカ広いくせに階段は一つしか無い。意味がわからなすぎる。普段の生活が不便じゃないのか?

 だが、今回はそんなよくわからない構造に助けられる。ここをなんとか守れば三階に行かせられないように出来るんだから。


「ハァハァハァハァ」

 

 後ろを走っていた男たちは息も絶え絶え。死にそうだ。


「よく頑張った」

 

 僕はそんな彼らに労いの言葉をかける。


「は、はい!」

 

 それに対し、彼らはいい笑顔で言葉を返してくれる。

 

「おい。もうそれを倒していいぞ」

 

「はい!」

 

 三階の階段のところで待機していた男たちに命令を下す。

 男たちは僕の命令を素直に聞き、とんでもなく大きなバケツを倒す。

 中に入っているのはベタベタヌルヌルの大量のスライム。

 三階に通じる階段はスライムまみれになった。

 もっと上手い方法で頑張りたかったのだが、急いで用意したのでお手軽に作れるスライム程度が限度だった。

 僕は短時間で準備するようなことはあまりやったことがなくて苦手なのだ……。


「お前ら。もう四階の方まで下がっていいぞ。後はここにいる奴らに任せろ」


「あぁ!任せてくれ!」


「お前らの頑張りは無駄にはしない!」


「お前たちの意思を必ずや受け継いでみせるとも!」


「必ず俺らの自由を手に入れてやろうな!」


「俺らの大和魂!しかと見せつけてやるよ!」


 三階に待機していた男たちは頼もしい言葉を告げる。

 彼らは見た目も筋肉質で、普通に頼りになる。

 この世界の男は結構普通なやつが多い。

 女男のようになよなよな奴も、デブのように太って傲慢な奴もかなり多いが、だが彼ら以上に普通に前世にいるような普通の男たちがいる。まぁ、みんな女嫌いであることは前世とは違うが。

 どうやったらこんな世界で前世にもいるような普通の男に成長するのだろうか。

 和葉に並ぶ不思議の一つだ。


「あぁ!任せた!必ずや……!」

 

 いい感じの雰囲気がこの場に漂っていた。


「四階への上がり方はわかっているよな?」


「はい!」


「ならいい。では行け。最後の戦いに備えていろ。息をしっかりと整えておけよ?」


「はい!」

 

 学校にスライムを撒いて走った男たちは男の背中を見せて去っていった。

 ……やってることはただのいたずら小僧である。

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