第16話

 体育館。

 とんでもなく広い体育館。

 マット、跳び箱など基本的なものから、平均台や鉄棒など普通の学校にはなかなか無いようなものまで。

 様々な道具が揃っている。

 だがしかし、別にそんなのはどうでもいい。

 重要なのはここが頑丈であり、シャッターがあるということだ。

 僕は広く、音が反響する体育館を走る。

 僕と彼女たちの足音が重なりあう。


 ジーーーー

 

 すべての女性たちが体育館の半分を超えた時、シャッター降り始める。

 体育館の真ん中に存在するシャッター。

 先生たちが汗を流して運動する生徒に欲情したときのためのシャッター。理性を失った先生はこのシャッターの向こう側に閉じ込められるらしい。

 欲情した先生の攻撃にも耐えれるほどの頑強さを持ったシャッターなんだそうだ。

 

 ガシャンッ

 

 シャッターは完全に閉じられる。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                        

 準備は出来た。

 僕は懐からとある銃を取り出す。

 そして引き金を引いた。

 

 パシュッ

 

 銃口から飛び出してきたのはフックのついたワイヤー。

 フックは天井の端っこに開けられた穴に引っかかり、僕の体が浮かび上がる。

 

 キュルキュル

 

 ワイヤー小気味良い音を立てる。

 僕の体は空を舞っていた。

 

「がうッ!」

 

 信じられないことにワイヤーを使って、飛び上がる僕を追いかけるようにジャンプする彼女たち。

 そして、彼女たちの跳躍力は僕に届きかけた。


「あっぶね」


 僕の頬が引きつり、ボソリと心の声が漏れる。

 どんな跳躍力をしていやがるんだ。

 化け物か?


「ほっと」

 

 僕は開けた穴を通り、二階に上がる。


「いいぞ。やれ」


 僕は穴の近くで待機していた女男を含めて男たちに命令を下す。


「はい!」

 

 二階で待機していた男たちが行動を開始する。

 どでかいホースを握り締めた彼らは素早い動きで穴にホースを通す。


「準備完了だ!水を入れてくれ!」


 少し前までの女男とは思えないほどの大きな声を張り上げる。

 

「おう!」

 

 遠くから男の声が聞こえ、水の音から聞こえてくる。

 ホースから大量の水が出てきているのだ。

 僕達の作戦。それは至極単純。

 女性たちを閉じ込めて水を流して溺死させてしまえ大作戦!


「これであの雌豚共はあの世行きですね!」

 

 女男が目を輝かせて僕に告げる。

 ……サイコパスかな?僕は彼の姿に若干の恐怖を覚える。

 人を殺せるやったーじゃないんだよ?


「いや、そんなに上手くはいかないだろう」


「え?そうで」


 ドシンッ

 

「ひっ!」

 

 女男の言葉を遮るようにとてつもない衝撃が僕たちを襲う。


「な?」

 

 女男は目に涙をためて、こくこくと首を縦に振った。

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