第14話
夜風が僕の頬を優しく撫でる。
久しぶりの大舞台。
緊張し、変な汗をかいている僕を冷やしてくれる。
天上に輝く月光が僕を照らしあげる。
「ふぅー」
大きく息を吐いた僕の耳に入ってくるのは獣の唸り声。
正門の前で暴れている女たちの声だった。
ガシャガシャと正門が嫌な音を立てる。
正門はすでに門としての機能を果たしていなかった。
すでにボロボロ。
女男でも簡単に壊せてしまうだろう。
女性たちはそんな門を壊さないように細心の注意を払いながら必死に手を伸ばしていた。
正門の前。
校庭に堂々と立つ僕に向かって。
欲情に染まった瞳が。劣情を抱えた瞳が。本能に犯された瞳が。
僕を貫く。
「すぅー、はぁー」
高鳴る心臓を落ち着かせるように僕は深く深呼吸する。
ジーーー
学校内に設置されているスピーカーからかすかな音が漏れ出してくる。
放送室のマイクがオンになったのだろう。
始まる。始まるぞ。
目の前の獣たちも宴の始まりを予感し、静まり返る。
『主催、政府。場所、国立男神高等学校。男女婚活パーティー』
スピーカーから何の感情も読み取れない女性の声が響いてくる。
僕をさらった人たちと同じような政府の人間だろう。
政府の人間は男に耐性ができるように厳しい訓練を受けるんだそうだ。自らの本能を制御する術を知り、煩悩を抑えるために。
全く。
この世界に住むもの全員にしてほしいよ、それ。
僕の手に力がこもる。
『20時00分。ただいまの時刻を持って、男女婚活パーティーを開始致します。婚活パーティーの終了時刻は1時00分です。では、存分に婚活パーティーをお楽しみください」
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」
大地を震わす大号令。叫び声。咆哮。
ガシャンッ
僕の隣に正門が吹き飛んでくる。
「ちゅ」
僕は出来るだけ色っぽく。
魅惑的に見えるよう投げキッスをする。
静寂。
大地を震わす声も、大地を揺らす一歩も。
すべてが止まり、静寂に包まれる。
そして───────
「「「あぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!」」」
まるで狼のように、吠える。
月光に照らされ、狼のように四つん這いになり吠える姿はまるで狼そのものであった。
ギンッ
彼女たちの、猛獣たちの視線が一気に集まる。
その視線は僕の股間部分に集中していた。
「しっ」
僕は彼女たちに背中を向け、全力で走り出す。
さぁ、鬼ごっこの始まりだ。
捕まったら喰われる地獄の鬼ごっこ。
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