第11話

「……特に言うことないわ」

 

「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええ!!!」」」」」

  

 僕の一言にこの場にいた全員の驚愕の声がハモる。

 

「いや、よく考えたら君に頼むこととか無いわ」

 

 僕は床に転がる女男を見下ろす。


「力なさそうだし、根性もなさそうだし。多分君たちみんな囮として使った方が楽そうだ。3分ぐらい足止めしてくれるだろ」


「ひどい!?」

 

 僕の言葉に女男は驚愕する。


「ひどかないだろ。君は僕に協力しないんだろ?抵抗も諦めたんだろ?何もせず女の奴隷になるんだろ?」


「うっ……」

 

 女男は悲痛気な表情を浮かべ、すがるような視線を向けてくる。

 僕はそんな女男の頬を遠慮なく引っぱたいた。


「いたっ!」

 

「良いか?今この場にお前を守ってくれる力強い存在はいない。頼れる存在はいない。自分の手でなんとかするしかない。……それで?お前はどうする?」

 

 僕は女男と視線を合わせる。女男を僕の色に染める。僕の瞳に宿る闇が女男を侵略する。


「今、君に与えられている選択肢はたった二つだけ。僕に協力して生き延びるか、何の抵抗もせずここで女たちに犯されるか。そのどちらかだ。選べよ」

 

「やるよ!」

 

 女男は勢いよく立ち上がる。


「僕も手伝う!このまま何の抵抗もせずに終わるなんて許せないよ!」


 女男は目に強い意思を宿らせ、メラメラと燃えていた。

 ……え?チョロ……。

 さっきまで見せていたなよなよ具合は何だったの?

 全然グダらんやん。


「俺もて、て、て、手伝ってやろう!感謝しろ!」

 

 油ギトギトのデブも僕に近寄ってくる。

 ……え?何その手のひら返し。


「ありがと!」

 

 女男はデブの言葉に喜び、歓声の声を上げる。


「俺も!」


「俺も!」


「俺にも手伝わせてくれ!」

 

 どんどん男の人達が立ち上がり、拳を振り上げる。


「み、みんなぁ……」

 

 女男が声を震わせ、瞳に涙を浮かべる。

 ちょっと待って?なんで感動シーンみたいになっているの?さっき僕『特に言うことないわ』とか言ってたんだけど?

 何もしていないよ?なんで?なんで話がここまでトントン拍子に進む?

 ご都合主義?これがご都合主義なの?

  

「ありがとう!本当にありがとう!みんなで必ず……!」

 

 僕はなんか感動ムードに入っている他の男どもを思考の外へと追いやる。

 

「ふぅー」

 

 僕は一息つく。

 全く。

 こんな意味わからないイベントで女に襲われ、結婚を結ばれてたまるか!僕はまだ和葉に結婚してください!って言えていないんだ!

 絶対にこんなところで負けるか。負けてたまるものか。

 僕は生き残るため、頭をフル稼働させ思案にふけった。

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